そこから始まる中国大陸での逃避行。
物語の始まりは、夏樹の自殺だった。
中学、高校そして大学と一緒だった橋場広太は中国文学を専攻している。
夏樹は広太のことを親友と思っていたが、広太は夏樹を内心嫌っていた。
自殺の原因は広太にあった。
大学で演劇部に入った広太と夏樹。
先輩の桂と付き合うようになった広太は、桂に夏樹と恋人の不利をするよう求めた。
そして半年後に別れさせた。ただ復讐のために。
事情を知った夏樹の父親は、広太を葬儀の場から追い出す。
その様子を見ていた男がいた。
歌舞伎町にあるヤクザの事務所に呼ばれた広太。
脅され、中国に運び屋として行くよう言われる。
北京で雅之という留学生と出会う。
二回目に北京で事情を聞かれた広太はすべてを話す。
二人は北京を出て蘭州、酒泉へ逃げる。
酒泉には、ユウとシィの母娘がいた。
ヤクザの毛利が中国人の江と酒泉にやって来た。
暴力を振るう二人を、雅之とユウが殺す。
酒泉を出た4人は西を目指す。
ウルムチからカシュガルへ。そこで彼らが見たものは。
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まず、スケールが大きな作品を目指したというのはよくわかる。
しかし、正直のところ消化不良に終わった残念な作品。
印象に残る言葉は多い。
罪を犯すということは、常に怯えながら生きることだ。
(P32より引用)
たぶん、人間は平和なときよりも、追い詰められたときに人を愛したくなるものなのだ。
(P59)
あらためてよくわかった。不幸は連鎖していくのだ。
(P247)
不幸の中にもモザイクのように美しいものは盛り込まれているのだ。
(P247)
人は自分のいるべき場所に帰るものだ。羊たちが羊小屋に帰るように。
(P251)
これだけ言葉を選びながら、大きなテーマを描ききれなかった近藤。
作家は、いつか「ブラックな作品」を出したいと思うのだろう。
重松清が「疾走」を出したように。
その挑戦する気持ちは買う。
しかし、描き切れていない。残念だ。
彼女には作家として大きな才能があるのは間違いない。
今後の作品に期待する。
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