彼女たちは高校卒業後、どうなったのか。
「シオンの娘」
千夏は劇団でミュージカルに挑戦。
玲は大学で声楽を学んでいた。しかし上には上がいるもの。
歌が上手いというのはどういうことか。
かつて私も悩んだことがある。
この疑問は、「なぜ歌うか」とともに、根源的な問いでもある。
千夏がミュージカルに挑戦しているとは意外。
高校時代に玲と出会ったことから彼女は大きく変わった。
「スライダーズ・ミックス」
元ソフトボールのエース、早希。肩を壊し競技者としては終わり。
スポーツトレーナー目指し大学で身体の構造を学ぶ。
ある日、友人から音楽会に行くよう言われる。
トロンボーンの演奏に魅せられた彼女は、楽屋で奏者と言葉を交わす。
生の音楽は、人を感動させる力がある。
演奏者の緊張と達成感はその場にいないとわからないもの。
多くの人が、生の演奏に触れないでいるはず。
高校や大学の定期演奏会なら、気軽に参加できる。
録音ではなく、ぜひ一度、演奏会に足を運んでほしい。
「バームクーヘン、ふたたび」
千夏や玲が卒業した高校のクラス会が開かれる。
遠く日本海側の都市に行く者も現れる。
次のエピソードにつながる話。
「コスモス」
菜生は商業高校卒業後、日本海側にあるメガネ会社に勤務して10年。
今年は短大出の新人が来た。
難病の妹とか養子とか、話がやや唐突では。
ただ、高校以外にも波紋が広がるというのは、作品の世界が大きくなり喜ぶべきこと。
まるで、バタフライ・エフェクトみたいだ。
「joy the world」
オーディションに落ちた千夏。「育ちがよすぎる」との評価。
気落ちした彼女は実家に戻り、弟が作ったウドンを食べる。
ミュージカル俳優として知られる市村正親。
彼は以前、「オーディションこと人生だ」と語っていた。
初めてのミュージカルは大きな影響を残すもの。
私の場合、帝劇での「ミス・サイゴン」だった。
オーディションに落ちるのは、成長するチャンスでもある。
経験のない千夏は、遠くを見る余裕がない。
「終わらない歌」
千夏のいる劇団で、 若手公演が行われることになった。
この公演では外部からも人材を登用するという。
千夏は玲を推薦した。彼女を呼んでテストすることに。
劇団幹部も玲の歌唱力に高い評価を与える。
玲の役目は、千夏と七緒に刺激を与えること。
三人はトライアングルを形成する。
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前作の書評で、主役が千夏ではないかと書いた。
この続編でも、玲より積極的な行動が目立つ。
このシリーズは、これで終わりだろう。
続きは各読者が想像すればいい。
音楽の世界では、埋もれた人材が多く存在している。
ポール・ポッツやスーザン・ボイル。
彼らがオーディション番組に出て話題となったのはその証拠だ。
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千夏はほんと、まるで主役のような活躍ぶりでしたね。
まさかのミュージカル女優には驚きました。
そして玲と千夏の友情が続いていたのも良かったです。
二作続いたこのシリーズ、作品に漂う静かながらも爽やかな優しさが良いなと思います。
私の予想以上に、千夏は積極的でしたね。
本当に主役みたいです。
このシリーズ、「挑戦するのに遅すぎることはない」というテーマがよく出ています。
また、玲と千夏の起こした波紋が地方まで影響しています。
作者の意図が多くの読者に受け入れられているのは、読者のひとりとしてうれしい限りです。