彼女が三角関係を描いている表題作と「亜美ちゃんは美人」を収録。
「かわいそうだね?」
樹里恵は28歳で百貨店に勤務している。
アメリカ帰りの恋人、隆大がいる。
しかし元カノを自宅に住まわせるという隆大。
私が共感したのは職場の後輩、綾羽の意見。
同居の二人が「やっている」と考えるのは当たり前。
男と女が一緒に住むというのは、ただでさえ間違いが起きるもの。
ケータイを見た段階で爆発するのが当然の結末。
樹里恵が疑う時点で、どう考えてもおかしい。
英会話学校の外国人講師に意見を求める樹里恵。
EX(元カノの意味)をキリスト教と間違えるのは致命的。
本当にかわいそうなのは誰なのか。
それがこの作品のテーマなのだろう。読者の本音が出る作品。
「亜美ちゃんは美人」
高校で知り合った亜美とさかき。
亜美は人目を引く美人。
高校で一緒だった亜美とさかき。
美人で人の目を引く亜美に対し、さかきは亜美のマネージャー役。
大学は別だったが、二人は同じサークルに所属していた。
卒業後、亜美が惚れたのは、危険な崇志。
亜美の両親も崇志のことを不安視する。
しかし当の亜美は結婚を決意。グアムで式は行われた。
ダメ男を紹介した「だめんず・うぉ〜か〜」で知られる倉田真由美(くらたま)。
彼女が好きそうな話。
天の配剤というのか、免疫のない女性ほど危険な男に魅力を感じるもの。
この世は不思議とバランスが取れている。
さかきが認めた、嫉妬の消滅が女性作家らしい本音を示している。
思わずヒザを叩いた読者もかなりいたに違いない。
チヤホヤされる女性は落とし穴に注意が必要。
この文章を読んでいるあなたは大丈夫。自惚れないで。
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綿矢はデビュー当時の良さが戻ってきた。
説明でなく、表現しようとしているところは評価できる。
だが、綿矢はまだ真の力を出していない。
少し前に流行した、「本気出すのは次」なのだろうか。
「かわいそうだね?」は週刊誌に連載されたもの。
結末以外、盛り上がりに欠ける作品を毎週読むのは辛い。
綿矢は作家として何を目指しているのか。
方向を示すべきではないのか。
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>綿矢は作家として何を目指しているのか。
>方向を示すべきではないのか。
これは私も似たことを思っています。
目指す方向が定まっていない印象があります。
「かわいそうだね?」の後に出た4作品もまだ試行錯誤している感じがします。
私的には「かわいそうだね?」のような書き方をさらに磨いていってほしいのですが、本人はまだ納得いかないものがあるのかも知れません。
今後出てくる新作がどんな感じなのか、楽しみに待ちたいと思います。
遅くなりましたが、この作品を紹介いただきありがとうございます。
人が薦める作品を読むのは、緊張するものです(汗)。
彼女にとっては試行錯誤の段階なんですね。
私も、今後出る彼女の作品には注目したいと思います。