意欲は買うが、粗さの目立つ作品。
物語は東京都に属する美浜島から始まる。
中学生の信之は、同級生の美花と体の関係があった。
年下の輔は、父親の洋一から虐待を受けており、いつも傷だらけ。
信之のことを兄のように慕っていた。
ある夜、島に大津波が来る。津波で住民のほとんどが死亡した。
生き残ったのは信之、美花、そして輔。
それ以外に船で海に出ていたカメラマンの山中と洋一。燈台守のじいさんだけ。
その後、生き残った人たちはどうなったのか。
信之を中心に話は進む。
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「風が強く吹いている」や「舟を編む」とはまったく違う。
「まほろ駅前多田便利軒」や「まほろ駅前番外地」でもない。
これが本当に三浦の作品なのか。何度もそう思いながら読んだ。
視点の変化というのは、この作家にしては珍しいのではないか。
「告白」で知られる湊かなえを連想させる。
最初に信之。次に南海子。そして輔。
読者には、南海子の夫が信之であることが容易に想像できる。
また、南海子の不倫相手が輔であることもすぐ分かる。
結末は読めなかった。
だが、美花と山中が合意の上だったことは予想通り。
殺人犯である夫と今後も生活するという南海子の選択。
私には理解できない。怖くないんだろうか。
人を殺すということに対する恐怖が感じられないのも疑問。
最初の殺人(山中殺し)で何かが壊れたのか。
家を出た信之が戻ってくるのも理解不能。彼は何がしたいのだろう。
「暴力には暴力を」という主張が通ってしまうのか。
連載小説特有の粗さがかなり目立つ。
持ち味を生かせない作品は、私でなくとも高く評価できないはず。
まず、この作品は08年に出ている。
ということは311の津波以前に書かれているということ。
しかし、私を含めて多くの読者は311のことを思い出したはず。
角田光代ではない。「永遠の仔」を出した天童荒太でもない。
新しい分野に挑戦するという姿勢は買うが、それ以上のものはない。
タイトルにある光は、私には見えなかった。
次に三浦の作品を読むとしたら、「天国旅行」か。
アマゾンで高く評価されているのが気になる。
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