26歳の時に書かれた本格ミステリー。ネタばれあり。
以前、惨劇の起きた九州にある無人島の角島。
ここに、大学ミステリー研の7人が来た。
彼らはエラリイ、アガサ、ルルウなど互いにニックネームで呼びあっていた。
このことが事件に大きく関係している。
島まで送った漁船は火曜日まで来ない。
その間、メンバーがひとりずつ殺されていく。電話など、連絡方法はない。
過去、このサークルでは、千織という部員がコンパで亡くなっていた。
一方、本土では江南が島田とともに過去の事件を調べなおしていた。
千織が殺されたという手紙が届いたからだ。
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評判になるだけあって、よくできている。
叙述トリックになっている守須のセリフに、作者の想いが伝わってくる。
紅茶を何杯も飲むこと。
舞台が砂漠ではなく島であることにも意味がある。
バイクや水差しなど、ヒントはあったものの私は核心部分に気がつかなかった。
どれくらいの読者が犯人を読めていたのか気になるところだ。
私が読んだのは講談社文庫の新装改定版。
作品自体が「そして誰もいなくなった」(クリスティ)を基にしている。
不思議なのは、10角形と11角形のカップがある場合。
誰も気がつかないものだろうか。
私には理解できないことだ。ミステリー研なら、こういったことには敏感なはずなのに。
少なくとも、コーヒーを淹れたアガサは気がつくはずだ。
旧版解説で鮎川哲也はクリスティの「そして誰もいなくなった」についてこう書いている。
「出来としては話が平板で盛り上がりに欠けているように思う」
(P468より引用)
そうだろうか。私には大いに疑問だ。
アガサのこの作品については世界中から評価されている。
私自身、読んでいて鳥肌が立った。
また、探偵が存在しない点について、戸川安宣が「堪らなく不満」と書いている。
(P490)
この部分についても賛成できない。
アガサは「アクロイド殺害事件」や「カーテン」でも「今までにない作品」を目指していた。
探偵がいないことが評価するポイント。
定型にこだわっているからミステリーは衰退する。
直木賞作家の辻村深月は、この作品を読んで衝撃を受けたという。
ペンネームに「辻」が入っているのも彼の影響による。
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