敗走する幕府軍と土方の運命は。
上巻についてはこの記事に書いた。
「燃えよ剣(上)」司馬遼太郎
二条河原での決闘で因縁の七里研之助を斬った土方。
しかし、時代は急速に動いていた。
大政奉還が新撰組に与えた影響は大きかった。
沖田は肺病が悪化し、寝たきりの状態。
近藤も肩を撃たれて戦闘不能の状況。土方が新撰組の指揮を執る。
鳥羽・伏見の戦いでは、徳川慶喜と松平容保が大阪から逃げてしまう。
会津藩士たちはよく戦ったが、将軍が抜けたことは大きな意味を持った。
土方は勝つと信じていたこの戦いに敗れる。
慶喜は逆賊になることを極端に恐れていた。
大阪から船で移動する前、土方は2日間の休暇を取る。
雪と過ごすためだ。
流山で近藤は官軍に投降した。土方は止めたものの、近藤は処刑される。
その後、結核が腸に達していた沖田は病死する。
残った土方は艦隊を率いる榎本武揚に合流して戦いを続ける。
甲府から東北、そして北海道へ。榎本は北の大地で別の国を作ろうとしていた。
だが、官軍は幕府軍を追撃する。
永倉新八や斉藤一は土方と行動を別にする。土方にも最期の時が迫っていた。
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土方は原理主義者。人の好き嫌いも激しい。すぐに人を斬るが、どこか憎めない。
喧嘩屋の土方は剣の道に生きたが、西洋の軍隊技術を短期間でマスターする。
有事に存在感を発揮する人物の代表だ。
「武士とは何か」「死ぬために生きている」ということを常に意識している。
私を含めた現代人にはない感覚。
近藤が捕らえられ、処刑されたことは歴史的な事実。
土方の最期もまた同じ。読んでいてそれが分かっているだけに辛いものがある。
時代は剣から銃へ。しかも幕府から薩長の新政府へ。
その中にあって、新撰組は負けるべくして負けた。
しかし、その存在は今でも多くの日本人が赤穂浪士とともに記憶している。
安易なヒロイズムは私も嫌いだが、読んでいるうちに共感してしまう。
もう一度生きられるとしたら。土方は、同じ生き方をしたはず。
近藤は違った選択肢を進んだだろう。
学のある山南や、武田観柳斎は薩摩軍に参加していたに違いない。
近藤や土方は歴史が必要とする人物。ドラマ的な人物といえる。
函館での雪との再会シーンは、司馬の作家としての力量が発揮されている。
多くの読者が感動したはず。もちろん、私もその中のひとり。
日露戦争で活躍した東郷平八郎や靖国神社参堂に像が建っている大村益次郎も登場。
大村はNHK大河ドラマ「花神」で主役となった人物。
中村梅之助が好演した。
何故、日本人は新撰組が好きか。
それは、「消え行くものを守ろうとする美しさ」に共感するから。
この作品を読むと、沖田は自分がないように行動している。
近藤や土方を死ぬ覚悟をしている彼を批判するのは簡単なこと。
だが、その批判に何の意味があるだろうか。
「この人と一緒なら死んでもいい」という人物は、ある意味幸せだ。
現代の日本に、そんな人物がどれだけいるだろうか。
新撰組つながりで「壬生義士伝」(浅田次郎)を読むべきか。
それとも「竜馬がゆく」を読むべきか。
どちらにしろ図書館で予約なしで借りられるので今がチャンスかもしれない。
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