2014年11月16日

「ストックホルムの密使(下)」佐々木譲

二人の密使はスイスのベルンからロシアへ。
無事に情報を伝えることができたのか。

 

デンマーク、戦争で荒廃したドイツを抜けスイスへ向かった二人。
しかしベルンの日本外交官たちは、重要情報を打電しない。

交通事故に遭った大和田は命を取り留める。
情報を日本側に流さないよう暗殺計画が実行された。

二重スパイだったコワルスキ。
四郎がベルンで会ったロシア将校とともに飛行機でモスクワへ。

そこで、四郎と親しい小川芳子と再会した。
慰問団にもぐりこみ、満州を目指す。

司令官の車を奪い、満州を目指した3人。コワルスキは背中を撃たれて死ぬ。
四郎も重傷を負うが、日本側の病院に収容される。事情を話すが信じてもらえない。

その間、日本ではポツダム宣言の扱いについて議論されていた。
鈴木首相は「黙殺」を公表したものの、「拒否」と解釈された。
天皇の意向もあり、ソ連を仲介とした交渉に望みをつなぐ。

京城(今のソウル)経由で広島に着いた四郎と芳子。
その日はちょうど8月6日だった。

東京では終戦か戦争継続かが議論されていた。
問題となったのは天皇制の存続。陸軍が戦争継続を主張し議論はまとまらない。

陸軍の一部には、宮城(皇居)を封鎖しようという計画まであった。
玉音放送のレコード争奪から内戦という恐れさえあった。
東京憲兵隊の秋庭少佐は、磯田に米内海軍大臣の警護を命じた。

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まず、興味深かったのが二人の祖国に関する想い。
ポーランド人のコワルスキは命を懸けることに躊躇はない。

逆に四郎は祖国に何の未練もない。国に恩を感じていないからだ。
この二人の違いこそが、作品の大きなテーマになっている。

正直、カジノで赤軍の将校と出会いモスクワに行く密使たち。
慰問団に加わって東に向かい、広島で原爆投下の日に着く。

かなり出来すぎだが、それを差し引いても私には逆立ちしても描けない作品。
つまり、読む価値のある作品ということ。

作者はこの作品を書くにあたり、どれだけ歴史を学んだのか。
しかも歴史の間をフィクションで埋める作業がどれだけ大変か。
高く評価すべきだ。

小川芳子のモデルはソ連に亡命した岡田嘉子だろう。
彼女は波乱万丈の人生を送った。

米内暗殺を食い止めるため死んだ磯田。彼は無駄死にだったのか。
歴史には名前が残らないものに重要な役目を持った人物が多く存在している。

また、大和田のように優れた情報収集能力を持つ人材は各国にいる。
だがその情報が伝わらない悲劇もある。

思い出すのが911テロの情報を事前に知っていたとされる話。

ブッシュは同時多発テロを事前に知っていた!
9・11の2日前から準備されていた対アフガン戦争


作者の佐々木は警察小説の名手としても知られている。「制服捜査」
そして直木賞受賞作「廃墟に乞う」については以前記事に書いた。

この作品のように、戦争を描けるというのは作家として有利。
大したものだ。

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