列車の検査を担当するようになった彼が、自分の生い立ちを探る。ネタばれあり。
成長した少年は、列車の検査技師として活躍していた。
列車製造会社からJR西日本に移籍した。
5歳までの記憶のない彼は、茅ヶ崎の養護施設で育った。
定時制高校から工業大学の二部を卒業した。
「列車の友」という雑誌を読んでいた彼。
テープ起こしなど手伝い、編集部ともつながりがあった。
妻は妊娠し、もうすぐ父親になる主人公。彼にはどんな過去があったのか。
「列車の友」編集部に送られてきたテープにその答えがあった。
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タイトルだけ見ると、鉄道マニア向けなのかと思う。
しかし読み進めると、少年の生い立ちをめぐるドラマであることが分かる。
読者にどの情報をどこで提供するかという点。
作者が苦心したであろうということがよく理解できる。
東室蘭の駅で起きた最初の事故。
この事故で主人公の両親は亡くなった。
さらに、東海道線での2回目の事故。
少年だった主人公が再び記憶喪失になるのは出来過ぎている。
目が見えなくなるという点がないだけで、韓国ドラマ「冬のソナタ」みたいだ。
中央線のエピソードに出てくる高柳ユージは尾崎豊がモデルなんだろう。
この作家はこの作品の舞台となっている茅ヶ崎で育ち、北大を出ている。
大阪が出てくるのは何か縁があるからなのか。
恥ずかしながら、私は今まで名前すら知らなかった。
この他にどんな本を出しているのか調べてみる価値はありそうだ。
次に彼の作品を読むとしたら「おれのおばさん」になるのか。
JR西日本といえば思い出すのがJR福知山線脱線事故。
死者107人という大事故だった。
主人公の男は、この事故をどう解釈したのか。ぜひ訊いてみたい。
国鉄からJR各社に分割され、車両は「より軽く」「より速く」が求められるようになった。
改札も自動化され、職員と利用者の触れ合いが減ったのは間違いない。
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