この記事、ネタばれあり。
↑サファイア違い(笑)。
「真珠」
タヌキ顔と体型を持つ50歳の女性、林田と会って話をすることになった男、平井。
イチゴ味の歯磨き粉を愛用していた彼女は初恋の話などを披露する。
平井も自分の昔を思い出す。林田は、連続放火犯だった。
この話、アイデアはいいけれど大切な部分で無理がないだろうか。
他人に成り済ますというのは難しいものだ。
「ルビー」
実家に帰省した編集者の女性。
家の隣には、老人福祉施設<かがやき>が建っていた。
これも、元受刑者専用施設という設定に無理があるのではないか。
そのため登場人物に感情移入できなかった。
「ダイヤモンド」
主人公は車の整備士をしている男。
出会いパーティーで知り合った美和と婚約していた。
男が助けた雀は、女性の姿で男の前に現れ1週間願い事をかなえると言い出す。
美和の欲しがっている物が何か探すよう男は依頼する。
現代版「鶴の恩返し」とも言える作品。
雀女が「交尾」と言っているのは笑えた。
読んでいて「葉桜の季節に君を想うということ」(歌野晶午)を思い出す内容。
自分が騙されていることに気がつけよ。鈍いなあ。
「猫目石」
隣の部屋に住む女性、坂口の飼っていた猫がいなくなった。
大槻真由子は一緒になって探す。真由子の夫が木に登って猫を助けた。
その後、坂口は大槻家の秘密を次々と暴露する。
湊得意の「視点の変化」がよく出ている作品。
坂口の死は単なる事故?
「ムーンストーン」
市会議員の妻が主人公。
夫はトップ当選するほどの人気ぶりだったが県会議員選挙に挑戦して落選。
それ以降、妻に暴力を振るうようになった。
妻は、暴力が幼い娘に及ぶのを見て反撃し、夫を殺してしまう。
妻の弁護を担当することになったのは、昔の同級生だった。
思い出話にも、湊得意の視点の変化が使われている。
「サファイア」
物をねだらない女性が主人公。
同じアパートに住む男、田中から18きっぷを手に入れた彼女はひとり旅に出かける。
旅先で中瀬という男と出会い、恋人となる。
中瀬に指輪をねだった彼女。
しかし、中瀬は電車に乗ろうとしてホームから転落し死ぬ。
田中から意外な話を聞く彼女。
中瀬は田中とともに悪質商法で金を稼いでいたという。
「ガーネット」
前の「サファイア」に続く作品。
主人公の女性が作家となった。
作品が映画化されることになり、主演女優と対談することになった。
互いに思い出の品について語る。
この女優、以前59万円で価値のない宝石を買っていた。
この終わり方は爽やかで好感が持てる。
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話題作、「告白」ではモノローグの連続が話題となった湊かなえ。
作家としての可能性は広がったのではないか。
この短編集を読んで私はそう感じた。
角田光代なら、こうした作品たちをどう描いたか。
そんなことを想像させる。読んで損はない。
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