時代小説だけでなく、現代小説も最後に登場。
月の松山 |
10の短編のうち、一部を紹介。
「羅刹」
面作り師の宇三郎。師匠の娘と恋仲だった。
3人いる弟子でくらべ打ち(今で言うコンペ)を行うことに。
勝者が師匠の娘と結婚し、師匠の後継者となる。
宇三郎は信長をモデルとして面を作ることを決めた。
モデル観察のため、本能寺まで出かける。
明智に裏切られる信長。その姿を面にする宇三郎。
面はできるが、後継者としては認められなかった。
宇三郎はその面を自分の手で壊す。
師匠は面に込められた悪の顔を弟子の宇三郎に気がついてほしかった。
信長の若き秘書官、森蘭丸も登場するなど豪華。
作者の意図がよく理解できる作品に仕上がっている。
「荒法師」
この作品を読んでいて思い出したのが「のぼうの城」(和田竜)。
忍城(おしじょう)が出てくるし、三成がそれを攻めるのまで同じ。
この作品が出たのは昭和19年のこと。
山本は、戦争に協力する作品は書かなかったと述べていた。
しかしながらこの作品には「どこまでも戦う」という戦争の影が見える。
もし、主人公の僧が戦うことの無意味さを訴えていたなら。
作品自体が世に出なかったかもしれない。
「追いついた夢」
商人の和助に身を売った女性、おけい。
和助は新たな生活を夢見て長い間準備をしてきた。
しかし隠れ家に行く途中、卒中で倒れてしまう。
山本は悪人に対してはどこまでも冷たい。
そのことが、この作品では救いとなっている。
「月の松山」
道場の師範代を務める孝也は医者から100日の命と宣言される。
そのことを誰にも話さず、弟弟子の西秋に厳しく稽古する孝也。
奉納試合が迫っていたからだ。
余命が知れた場合、武士はどのように生きるか。
日本人のひとりとしてこの生き様は記憶したいものだ。
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最後に出てきた「恋愛第六番」。
唯一の現代小説でテンポは早く、意図はわかるが私にはもうひとつだった。
山本の作品は当たり外れが激しい。
ただし、「みんな外れ」ということはまずない。
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山本周五郎著「月の松山」
本の話〜『月の松山』(山本周五郎著)
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