芥川賞受賞作。
主人公は27歳のタクシー運転手。
幼い頃、親に捨てられ遠い親戚からは虐待を受けた。
白湯子という女性と一緒に暮らしている主人公の男。
彼女は男に捨てられ、妊娠した子も喪っている。
施設で世話になった人から、父親が健在であることを知らされる。
会うよう言われるが拒否。
この場面は「大地の子」(山崎豊子)を思い出した。
子どもにとっては捨て子も中国残留日本人孤児も同じベースだ。
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文庫P67に、蚊に刺される話が出てくる。
蚊のことを「彼」と表現しているが、血を吸うのはメスの蚊だけではないか。
もし、直木賞であれば。
選考委員が、「この作品には重要なミスがある!」と叫んでいたのかもしれない(笑)。
文学が、「人とは何か」を大きなテーマにしているのであれば。
この作品は間違いなく文学。
作家になるためには、複数の作品を描く必要がある。
誰でもひとつの作品なら描けるからだ。
作者と読者、両方に共通して求められるのは想像力。
「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ)でもそうだった。
人の経験には限度がある。それを想像力が補っている。
この作家、もう一冊読んでもいいと思わせる魅力がある。
忘れないよう記録しておく。
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