しかも泣けた。
留置場で老人は話し出した。
大正時代における盗人の仁義を。
「闇の花道」
松蔵は姉が女郎屋に売られた後、義賊「目細の安吉」に弟子入りした。
母親は医者にも診せられず亡くなった。すべては父親の博打が原因だった。
安吉は、松蔵が二度と父親に会えないよう求めた。
それが、松蔵にとっていい選択だからだ。
検事おしろいの提案を断った安吉。
上野駅に銀次を迎えに行くが、列車を降りたとたん再び逮捕されてしまう。
安吉は今後一切、警察との関わりを絶つと宣言。
邸にあった100万円(今の価値で言うなら億単位)を貧民街に投げ込む。
義賊として安吉の意地を見せた。
「槍の小輔」
紅一点のおこんがメインのエピソード。
前の「闇の花道」で、銀次が逮捕されるきっかけになった金時計。
山県有朋が明治天皇から拝領したものだ。
彼女もスリとしての意地があった。再び山県から盗もうと画策する。
花火の日、山県の胸から金時計を抜くおこん。
だが山県は犯行に気がついていた。
何を思ったか、山県はおこんを小田原の別邸に連れて行く。
「百万石の甍」
栄治がメインのエピソード。
花清に戻るよう前田家が仲介し、栄治はどうするのか。
国宝の香炉を盗み、花清と前田家に酒十斗、餅十斗を持ってくるよう年賀状を出す栄治。
花清の血より盗人としての自分を大切にする栄治。
「白縫花魁」
松と生き別れになった姉のおさよ。
彼女は1000円で女郎屋に売られた。
康太郎と仲良くなった松は、姉を探す。
おさよは白縫花魁となっていた。
「衣紋坂から」
おさよを取り戻すべく、兄貴たちに相談する松。
しかし、次々に難題が持ち上がる。
何とか金を用意し、おさよは開放される。
しかしスペイン風邪によって彼女の命は終わりを迎えていた。
このエピソードは泣けた。浅田はこうした人情話が上手い。
永井荷風が出てくるのはびっくり。
***** **** ***** ****
仁義とは何か。
盗みは悪いことなんだけど、この作品に出てくる義賊は許せてしまう。
解説は映画監督の降旗康男。
「鉄道員」でメガホンを取った彼の文章も読む価値がある。
この闇がたりはシリーズになっている。すでに5巻まで出ており、評価が高い。
検事のおしろいと対決する日がやってくるのだろう。
今後も読む価値ありと判断した。
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