2014年03月10日

「乱反射」貫井徳郎

2歳の息子が死んだのは、殺人だった。
多くの人が関与した異色ミステリー。
   
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貫井の作品は「灰色の虹」「明日の空」に続いて3冊目。
この作品も500ページを超える大作。
読み応えがあったけれど、決して難しい内容ではない。

新聞記者歴10年の加山には妻の光恵と2歳になる健太がいた。
父親が倒れたと知らされる。母親から同居を求められる加山。
嫁と姑の関係は険悪に。

田丸ハナは裕福な家に住む主婦。
子育てが終わり、暇だったことから外に目を向ける。

道路拡幅工事に関連した樹木伐採反対運動を展開する。
でも自分が人を引っ張るのは嫌で、誰かが先導することを求めている。

三隅幸造はリタイアした元重役で態度や考えが尊大。
充実した生活のためクマという犬を飼うことに。
腰痛のため散歩途中にクマのフンを処理しないでいた。

久米川はアルバイト医師。何かと責任を避けるようにしている。
ベテラン看護師の羽鳥を母親のように感じていた。

大学生の安西はすぐに風邪をひく。
大きな病院の救急外来が夜間空いていることを知り、症状が重くないのに利用する。
加奈という女子大生と出会う。

市の職員、小林麟太郎は安定志向。
すぐに責任回避を考える。若いので何かと雑用を押しつけられる。

安達道洋は樹木医として街路診断する役目なのだが、過度の潔癖症。
そのため自分の息子さえ抱けない。

そして運転が苦手な克子。
家で新車を買うが、車庫入れが苦手。

「風が吹けば桶屋が儲かる」を小説にするとこうなる。
各登場人物のマイナス部分が重なり、幼児が亡くなる。

マイナスの状態で始まり、0の時事件が起きる。
この手法は「バトルランナー」(リチャード・バックマンだが実はS・キング)を思い出す。
ただ、「乱反射」は事件後の描写がとても重要。

作品で描かれている、法律上罪に問えない人たちは不能犯と呼ばれる。
法律上の責任は警察が、道義的責任を加山が追う。
作品でも描かれているように、予見可能性がないと刑事責任は問えない。

一方、樹木の診断を怠った男は不作為犯になる。
「しなければならなかったことをしなかった」という罪だ。

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細かいことだがひとつ指摘したい。
「割り箸は一本だけでなく」とハードカバーP60にあるが、これは「一膳」だろう。

コンビニなどで「箸は一本ですか?」という店員が稀にいる。
読者が誤って使うんじゃないか。作者だけでなく、編集者も気をつけるべき。

内容としてはよくできている。
ただ、ハナが英会話を習うこと。そこで仲間を作り、伐採反対運度をする。

市議会議員を巻き込んだり、河島が死んだりするのはご都合主義ではないか。
小説に奇跡が起きる回数は少ないほうが説得力がある。

素直に謝れないという人の行動。
責任回避で盥回ししたがる役人は、黒澤映画「生きる」そのもの。

核となるアイデアについては、だいぶ前に刑事ドラマで見た記憶がある。
その時は、たしかガス爆発だった。

貫井が優れているのは、加山が自分のゴミ捨てについて思い出す場面。
正直、私はすっかり忘れていた(汗)。
厳密に言うと生きている限り、ほとんどの人が犯罪者。

救いとしては、三隅幸造の注意する派手な女子高生の存在。
人を外見や言葉遣いだけで判断してはいけないという教訓まで読者に示している。

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