2014年03月06日

「不実な美女か貞淑な醜女か」米原万里

同時通訳とはどんな存在なのか。
不適切用語についてなど、米原節が炸裂。
   

彼女の本は、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」以来。
盛りだくさんの本で、かなり笑える。

放送禁止用語に関する、彼女の意見は賛成できる。
何かと別の用語を使いたがる現状は、どう考えても間違っている。

問題なのは言葉ではなく、差別そのものにある。
現代の「言葉狩り」は、今後も多方面で表現の自由を妨害するに違いない。

通訳者のメモがどんな意味を持っているのか。この本を読んでやっと理解できた。
記憶についても短期記憶と長期記憶について、心理学の講義を思い出す内容。

通訳というのは翻訳と違って時間的制約に縛られている。
だが、通訳は「消えもの」のため後に残らないという一面もある。

ロシア語が罵り言葉の多さを誇っているというのは知らなかった。
「お前のかあちゃん・・・」の説は大いに笑えた。

言語による違いという点では、タイ語の「コーヒー」。
英語の「カルピス」が紹介されている。

タイ語で「コー」は「ください」を、「ヒー」は女性の局部を意味する。
タイに行く人は気取って「カフェ」と言うべき。

一方のカルピスは、英語に直訳すると「牛のオシッコ」。
英語圏の人と話す際は気をつけるべき。

こうした「危険な言葉」については、以下のページが詳しい。

海外で口にしてはいけない日本語とは何か? 決定版  

海外で絶対使ってはいけない日本語 【外国では禁止・NGワード】

日本語で「いとこ」という表現が、中国語だと16に細分化されるという話。
これは各言語で違いがあるはず。

たとえばインドネシア語の動詞には過去形がない。
だからといって「下等な言語」とバカにするのは意味がないばかりではなく不遜だ。

諺も各国で違うが、同じ意味を持つ諺も存在する。
この本で紹介されていた中では、「船頭多くして船山に登る」。

これが「コックが多すぎるとスープに塩を入れすぎる」になる。
思い出すのは「赤毛のアン」(モンゴメリ)の一場面。
女性3人が「味が足りない」とそれぞれ調味料を入れすぎてしまう。

また、「赤毛のアン」には聖書やワーズワースの詩など多くの引用が含まれている。
こうした引用は日本人にはなかなか理解しにくい。

「目からウロコ」が聖書からきていると言うのは知らなかった。
これぞまさしく目からウロコ。

通訳を通して見た言葉と各国の事情。
300ページの中に含まれている情報はとても多い。

通訳に必要なのは、厳密な訳ではなく情報。
前もってメモを手に入れるなど根回しすることと、文脈をつかむ。
時には切り捨てるセンスと勇気が必要。

通訳には耳が重要ということで、イヤホンで音楽を聴く事は避けるべきという意見。
そして、3歳児には多言語を聞かせることが弊害となるとの主張。
こうした考えには反論があるかもしれない。

その一方で、日本語を大切にするという想いは強い。
彼女も書いているように、海外にいると祖国に対する想いは強くなるものだ。
これは海外の日本人学校やインターナショナルスクールにいる生徒を見ればよく分かる。

ところですぐに下ネタに走るのは、彼女の特徴なんだろうか。
下品な部分が多いため、この本は電車に乗っている際など読むのは危険。

この本で読売文学賞を受賞した米原。
56で亡くなったのは、通訳によるプレッシャーが大きかったのではないか。

あと10年20年生きていたなら、別の本を出せただろうに。
彼女の死による文化的損失はとても大きい。

この本、アマゾンのオールタイムベスト小説100に選ばれている。
我々が彼女の強いメッセージを受け止め忘れなければ、彼女は永遠に生き続ける。

書評(作家別一覧)

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posted by りゅうちゃんミストラル at 02:06| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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