2014年03月01日

「砂の女」安部公房   

昆虫採集に出かけた男。
家に閉じ込められ、砂をかき出す毎日が待っていた。
   

31歳の教師、仁木が主人公。彼は昆虫採集を趣味にしていた。
S駅で下車した彼。海岸に向かう。狙うは砂浜にいる昆虫。

その夜、男は砂に埋もれたある民家に泊まる。
翌日、外に出ようとすると縄梯子が外されていた。
男は、女とともに砂を書き出す毎日を送る。

脱出を試みるが、砂の勢いに負けてしまう。
作業を止めると、水の供給が止まる。

この作品、Amazonオールタイムベスト小説100で紹介されていた。
20以上もの言語に翻訳されているという。
この作品が、海外でどんな解釈をされているのか気になる。

不条理という点で思い出すのが「変身」(カフカ)。
朝起きたら虫になっていた男と比較すれば、砂かきは常識の範囲内。

作家は何故、不条理を描くのか。
それは、文学の大きなテーマのひとつが「人とは何か」だから。

不条理に陥ると人はありのままの自分を出すようになる。
また、穴から出られないという状況は「ねじまき鳥クロニクル」(村上春樹)を思い出す。

ノーベル賞を辞退したサルトル。「人は自由の刑に処せられている」と述べた。
文学は逆に、人を描くため様々な不条理を用意する。

後半、連れ戻された男は外に出て空気を吸うことを求める。
村の男は交換条件を出す。みんなの前で性行為を行うこと。

男はその気になるが、女は嫌がる。
私は「こいつ、人としてのプライドはないのか?」と考えた。

だが、毎日砂かきさせられる状況に陥った人はまずいない。
読書感想文でよく使われる「もし私だったら」というのは。
その状況にいないと分からない。

「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ)でもそうだった。
あまりに不条理だと、読んだ時の感じ方と実際の行動には乖離が生じる。

この作品について色々と考えてみる。
まず、タイトルが「砂の男」だったらどうなんだろう。これはたいしたことない。

では次に、砂かきの現状から抜け出すことより、内職でラジオを得ることを求める女。
そして砂から水を取り出す装置に心を奪われる男。
この対比はどうなんだろう。女性の読者はどう感じたのか気にになる。

3つ目に、民法上の失踪宣告7年ということを最初に書く意味はあったのか。
この点は論じる余地があるのではないか。
もし最後に書けば、読者の興味をもっと引き付けられた?

恥ずかしながら、私は安部の作品をこれ以前に読んだことがない。
「頭のいい人が書いた作品」という点では、「死者の奢り・飼育」の大江健三郎を思い出す。

同じ東大でも、安部は森鴎外と同じ医学部。
養老孟司の先輩に当たる。

たとえ生まれ変わったとしても、私にはこうした作品は書けない。
だからこそ読む意味がある。

今日以降、芥川賞受賞作「壁」を読んでみるという選択肢ができた。
一冊の本を読むことによって新たな選択肢が広がる。
それはとてもあいがたいことだ。

書評(作家別一覧)

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[本のレビュー] 第09回 「砂の女」(安部公房)

安部公房『砂の女』  

砂の女

安部公房〜砂の女〜

『砂の女』:安部公房

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