2014年02月28日

「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里

エッセイストとして知られる米原のノンフィクション。
間違いなく読む価値のある、文句なしの傑作。
   

作者の米原は、1960年から5年間、プラハのソビエト学校に在籍していた。
父親が日本共産党からこの地に派遣されたためだ。
この本は、その時一緒に勉強した3人の同級生とその後について書かれている。

「リッツァの夢見た青空」

ギリシャ人のリッツァ。
性に関する情報を仕入れ、マリに教えてくれる貴重な友人(笑)。

リッツァと再会するマリ。
マリが帰国した後、何が起きたのか。

頑固なリッツァの父親は天晴れ。
どれだけの人が同じ行動を選択できるか。

「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」

貴族的な生活をしていたアーニャ。
嘘つきだったが、多くの人に愛されていた彼女。
そんな中、黄色いノート事件が起きる。

以下の記述が印象に残る。

「どの人にも、まるで大海の一滴の水のように、母なる文化と言語が息づいている。母国の歴史が背後霊のように絡みついている。それから完全に自由になることは不可能よ。そんな人、紙っぺらみたいにぺらぺらで面白くもない」
(本文より引用)

ユダヤの名を捨てたアーニャ一家。
この感覚は、我々日本人にとって理解しにくい。

そして68年「プラハの春」。
民主化の夢は、戦車によって踏み潰された。

最近、日本でも何かと話題になる愛国心。
遠い異国に住んでいるからこそ、祖国について考えることがある。

ドラマがヒットした「ルーツ」(A・ヘイリー)が遠い日本で受け入れられたのは何故か。
アフリカ系アメリカ人のことは実感できなくとも、「自分のルーツ」については考える。

肌の色や人種に違いがあっても。
自分のこととして出自が気になるのは世界共通に違いない。

在特会のような活動が愛国心ではないのは明らか。
このことは忘れずにいたい。

「白い都のヤスミンカ」

ユーゴ出身のヤスミンカは優等生。
特に絵画に関しては、先生が驚嘆するほどのセンスを持っていた。
マリはどこか近寄りがたい雰囲気を持つ彼女とは距離を置いていた。

ブーツを買いに出た日、マリはヤミンスカに声をかけられる。
彼女にとっての神は北斎だった。
その日をきっかけにして、二人は仲良しになる。

ユーゴ内戦の中、マリはヤスミンカと再会すべく、「白い都」ベオグラードに向かう。
果たしてヤスミンカは生きているのか。

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読んでいて感心するのは、米原が友人たちやその思い出をいかに大切にしているか。
それが行間にキラキラして見えるということ。

タイトルが青、赤、白というのは今のロシア国旗を思い出した。
これにはいろんな解釈ができそうなのでここで詳しくは書かない。

優れた技巧を持った作家は多い。
しかし、淡々と描くことで読者を惹きつけるこの作品は「読んでよかった」と思わせる。

角川文庫の解説は斎藤美奈子。
この作品が、いかに欧州現代史を深く描いているか。
かなり思い入れ深く書いている。

極東の島国にいると、ユーゴ内戦についての報道などは理解しにくい。
斎藤が書いているように、「セルビア悪者」ということで終わらせてしまうこともできる。

報道をいかに深く読むか。
世界史が「横の関係」で複雑なように、報道も疑ってみる必要がある。

米原万里氏は06年に亡くなった。
何年か長く生きていたら、エッセイにしろ活躍できた人だった。とても残念。

しかし、彼女の作品を読み、こうしたブログ記事にするなら。
彼女の存在は永遠だ。

こんな動画もある。

 

続きはこちら

世界わが心の旅 プラハ 4つの国の同級生 米原万里 (2)

世界わが心の旅 プラハ 4つの国の同級生 米原万里 (3)

この本、Amazonオールタイムベスト小説100で紹介されていた。
何度でも書く、彼女の想いは生き続ける。読者がいる限り。

書評(作家別一覧)

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嘘つきアーニャの真っ赤な真実

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