素直によくできた作品だと思う。ネタばれあり。
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貴志の作品は「悪の教典」、「クリムゾンの迷宮」以来。普通、この順番はない。
秀一の家は、母の友子と妹の3人。
そこに、曾根という男(母親の再婚相手でその後離婚)がやってくる。
妹には内緒にしていたが、曾根は妹の父親。
そのため母の友子は曾根を追い出せない。
競輪狂いで大酒呑みの曾根。
しかも傍若無人の振る舞いに怒った秀一。
弁護士に相談しても解決できないことを知った秀一は曾根を「強制終了」することを決める。
教室を抜け出してロードレーサーで自宅に戻り、曾根を感電死させる。
しかし、この計画を知る者がいたことを秀一は知らなかった。
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美術教師の設定などは「悪の教典」と同じ。
前に出した作品を読むのは、作家のソースが分かるという意味がある。
「この世に死んでいい命がある」という考え。
これは私も認める。だからこそ死刑は必要だ。
例えばアガサ・クリスティの作品では、「法律で裁けない人物」を何度か「処理」している。
復讐もある条件の下では認めるということだ。
「そんなことはない!」と否定したがる人もいるだろう。
そんな人に問いたい。秀一はどうすればよかったのか。
「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉はいつまで意味を持つのか。
復讐はいかなる条件でも認められないのか。
だが、本書では曾根を「強制終了」するだけでは終わらなかった。
荒さはあるものの、いろんなことを考えさせられる作品だ。
どうしてこの作品は倒叙で書かれたのか。
それは、山本警部補たち捜査員の目から見ると面白くないから。
読者はどこかで秀一に共感する。私もそのひとり。
世の中には、警察機構への挑戦として完全犯罪を計画する者がいる。
しかし、秀一はその対極をなす。母親や妹を守るために殺人を犯す。
このことから見ても、この作品は推理小説というより青春小説。
ひとつ苦言があるとすれば、山本警部補の判断。
秀一に時間を与えたことで、後に責任を問われることは明らか。
山本が漱石の「こころ」を読んでいなかったとしても。
容疑者の行動くらいは予想できたはず。
とある有名な探偵は、犯罪者に自殺するチャンスを与えることがある。
山本がその探偵と同じ考えであるとは考えにくい。
事実が明らかにされなくなるし、容疑者を失うからだ。
私はまだ「新世界より」を読んでいない。
近いうちに読むことになるのだろうと思う。
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