こんな作品が描けたんだ奥田は。いい意味で見直した。
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奥田が家族を描いた昨品と言えば長編の「サウスバウンド」がある。
他にも「イン・ザ・プール」や「空中ブランコ」を読んできた。
「サニーデイ」
主婦がネットオークションにハマる。
内緒で夫のギターまで出品してしまう。
男性作家が女性を描く場合、どの程度のリアルさがあるか気になる。
もちろん、逆の場合も同じく気になる。
この作品ではかなり上手く描けているんじゃないか。
「ここが青山」
突然、勤務していた会社が倒産した。
妻はかつての職場に復帰することに。
夫は「主夫」として家事をするようになった。
幼い息子は父親のいた会社が倒産したことを恥ずかしげもなく外に向かって話す。
正直に書く。
「セイザン」と読むのは知っていたが、「人間」を「ジンカン」と読むのは知らなかった。
漢字が読めない、常識の無さを忘れないよう記録しておく。
と思ったら、読みは「にんげん」でもいいようだ。
こんなページもある。
人間到る処青山あり(故事ことわざ辞典)
こう書いてある。
>「人間」は、人の住む世界・世の中という意味で、「じんかん」とも読む。
何だ、読みはどっちでもいいのか。
こんなページも紹介しておく。
「人間」は「にんげん」か「じんかん」か?
奥田の書き方だと、「じんかん」が正しいように解釈できるのは私の間違いか?
どちらにしろ日本語は奥が深いなあ。
「家においでよ」
妻の仁美と別居することになった38歳の正春。
自分の物を持って出た妻。そのため正春はソファなどを探す。
一人暮らしになって、オーディオやホームシアターを実現する正春。
やがて同僚3人が正春の「城」に入り浸るようになった。
奥さんがそれを浮気と勘違いするというのは私にも読めた。
浮気で喧嘩するなら、その妻は夫「粗大ごみ」ではなく大切にしているということ?
今回の短編の中で、この作品が一番好き。
雑誌でも「チョイ悪オヤジ」とか注目された。
どうしてそんな雑誌を買う人達がいるのか。
それは、「自分の居場所」すらない男たちの願望が世に漂っているから。
「グレープフルーツ・モンスター」
この中では一番の異色作。
40歳の主婦はダイレクトメール(DM)の宛名書きを内職としていた。
一人分で7円ととても安い給料。
会社と各家庭をつなぐ営業をしている若い男のことが気になる。
やがて性的妄想をするようになり・・・・
女性から見て、この作品はどうなんだろうか。
リアルなのか「ありえねえー」なのか。
「夫とカーテン」
世渡り上手な夫はすぐに転職したがる。
しかも妻には何も相談しない。
今回は、せっかく課長になった会社を辞めるという。
そして品川でカーテンと絨毯に店を開くという。
もう少し考えようと諭す妻。
しかし夫はすでに退職届を出してしまっていた。
こんな夫を持った妻は大変だ。
成功する確率はほとんどないだろうから。
この作品では夫婦が再び見つめなおすというメリットがあった。
しかしリアルの世界では真似しないほうがいい。
小説だから笑ってられるんだよ。ホントだよ。
「妻と玄米御飯」
N木賞作家になったことで経済的に余裕のできた42歳の康夫。
妻がロハスに凝りだした。
ユーモア作家である康夫は近所にいる夫婦や妻のことを小説に書きたい。
途中で出てくる「故ナンシー関を見習え」というのは奥田自身の経験?
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本来なら解説の部分に当たるのが、漫画家益田ミリによる「鑑賞」。
4コマ漫画が載っている短編集というのは珍しい。
一冊で2度美味しいというお得な本。
益田がOLの頃、奥田に手紙を出していた。
しかも住所を載せた返信が来たという。
どこで何がつながっているかわからないものだ。
益田が触れている「延長戦に入りました」はこれ。
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今度図書館で探してみよう。
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家族を描いた短編といえば思い出すのが森浩美。
「家族ずっと」や「家族の言い訳」 など多くのファンがいる。
もうひとりが重松清。女性作家では角田光代もいる。
重松でもなく角田でもない。
でも「いい感じ」の小説は読んでいて楽しい。
こうした短編集は知らないままでいることも多い。
今、こうして読めたことは私の運がいいと素直に思う。
書評(作家別一覧)
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