2014年03月05日

「ワン・モア」桜木紫乃

直木賞作家、桜木による連作短編集。
質の高さはさすが。
   
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「十六夜」

北海道の加良古路島にやって来た37歳の医師、美和。
高校時代からの付き合いがある滝澤鈴音から電話をもらう。

鈴音は大腸ガンが肝転移した。
父親から引き継いだ医院を手伝ってほしいとのこと。
美和はかつて市民病院にいたが筋弛緩剤を使った安楽死事件を起こしていた。

島で昴という元五輪競泳選手の男と男女の仲になった美和。
7歳年下の昴には妻がいた。ここでも美和はトラブルメーカー。
美和は島を出ることが決まり、昴は漁船から服を残して姿を消した。

格調高い文章を作者が目指しているのはよくわかる。
だが、このエピソードにいろんなものを詰め込みすぎではないのか。

例えば昴が元五輪競泳選手であるという設定。
ドーピング発覚で失格になった彼のことは、必要だったのか。

「ワンダフル・ライフ」

鈴音はガンで余命半年。元夫の拓郎に連絡する。
医院を引き継いですぐの妊娠。そして中絶。

厳しかった母の死。飼い犬のリン。
すべてがこの後のエピソードにつながる。
このエピソードは書き下ろし。

「おでん」

トキワ書店の店長、佐藤亮太。32歳だが女性とは縁がない。
かつて書店でバイトしていた坂木詩緒がアパートの前にいた。

ケガしていた詩緒を泊めた佐藤。彼は以前から、詩緒のことが気になっていた。
滝澤医院へ行くと、鈴音に代わって美和が診察。DVを疑う美和。
同居していたミュージシャンが暴力を振るったらしい。

DVを「僕じゃない」という佐藤に向かって放つ、美和の台詞が彼女らしい。

「もしあなたが加害者で、何食わぬ顔で彼女をここに連れてきたとしたら、わたしはあなたの心の病を疑わなきゃならない」
(赤字部分、本文より引用)

美和は内科医なんだけど、外科だったらメスの切れ味がすごかっただろうなあ(笑)。
結構この種のキャラは好きだ。実際に付き合うのは嫌だけど。

「ラッキーカラー」

浦田寿美子は滝澤医院のベテラン看護師49歳。
赤いバッグを買う。

赤といえば5年前に抗癌治療をしていた消防士の赤沢。
浦田のことを異性として見ていた。

5年後に迎えに来ると言っていたが、浦田は期待していない。
看護師に声をかけるのは病人という状況がそうさせると経験で言っているから。

だが、赤沢は浦田に手紙を書く。
二人はホテルのレストランで食事をすることに。

指輪が小道具として使われているのは女性作家らしいアイデア。
読んでいて思わず「浦田、そこで一歩前に出ろ!」と声が出そうになった。

50近い女性が恋愛したっていいじゃないか。
60歳の女子大生だって大いに結構。自分で壁を作るなんてもったいない。

「感傷主義」

放射線技師の八木。鈴音や美和とは高校の同級生。
医師をあきらめた過去がトラウマになっていた。

このエピソードも書き下ろし。
女性作家が男を描く場合、妙にサラサラしていたろする。
ドロドロの性欲というものを描けないことが多い。

八木は誰かモデルがいたのだろうか。
それともまったく想像の産物なのか。

Fly Me To The Moonはこの曲。

 

「ワン・モア」

鈴音の飼い犬、リンが子を産み多くが里子に出された。
そんな中、拓郎の父が再婚するという。

相手は社交ダンスで知り合った同い年の人。
亡き母の遺品を整理することに。

その後、犬の飼い主たちが集まって花見をバーべキューをする。
きれいにまとまりすぎの感あり。

***** **** ***** ****

ガン患者を描いた作品として思い出すのが「その日のまえに」(重松清)。
そして「東京タワー」(リリー・フランキー)。  

上記二つの作品では患者はガンで死ぬ。
特に「東京タワー」では抗がん剤による治療が怖いと感じた。

鈴音は緩和ケアを望んだが、美和が選んだのはキラー細胞を使った治療。
かつての安楽死事件への罪滅ぼしなのか。

それとも友人を失いたくないという意地か。
もしくは医師としての役目に目覚めたのか。

美和の想いについては読者によって解釈が違うはず。
この点、美和にとっては喪失と再生の物語であるとも言える。

この本、直木賞受賞作「ホテルローヤル」と似た構成なのか。
読んでみたいが、図書館ではまだ250人待ちの状態。
   
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舞台が北海道なのは、桜木が釧路生まれ(65年)だから。
このレベルであるなら、別の本を探して読む価値はある。

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