大学の自転車部が舞台の今回も興味深く読めた。
「サクリファイス」、「エデン」、「サヴァイヴ」と続いたシリーズ。
今回も競技する人が描かれている。
主人公は正樹。一浪して坊ちゃんの多いといわれる新光大に入った。
入学早々、事故で先輩の村上(部長)にケガを負わせてしまう。
「1年だけ」という約束で、自転車競技を始めた正樹。
彼には素質があった。すぐに頭角を現す。
部でのエースは大阪弁で話す、ヤンキーの櫻井。
しかし正樹には意外と親切。村上には隠しているが、喘息もちだった。
櫻井の存在こそこの作品の伏線。
兄の事故死やフレームを正樹に譲るなど物語の屋台骨でもある。
正樹も中学時代の柔道で大きな事故があり、トラウマになっている。
下のクラスで優勝し、ついにはインカレ王者となる正樹。
「何故走るのか?」という問いは永遠に続くだろう。
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小説はトラウマの連続。
そして生きていること自体もまた同じ。それを実感できた一冊。
以下の記述が記憶に残る。
俺は失ったもの、傷つけたもののために、どうやって祈ればいいのだろう。
(P290より引用)
300ページあるが、内容が簡単なのですぐに読める。
230ページにチーム・オッジの赤城が登場。
正樹はプロレーサーになるのだろうか。
「はぶらし」でも書いたが、近藤は、決して技巧に優れた作家ではない。
しかし「読みたい!」と思わせる物を持っている作家。今後も注目したい。
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