今回も実に重いが受け止めなければいけない内容だが物足りない。ネタばれあり。
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女性を拉致監禁し、殺害するという事件が連続して起きた。
隣に住む女子大生が被害者となった女性刑事の朝山が、この事件に挑む。
朝山だけではない。高校を中退した潤平も中心人物。
歌で勝負するため、コンビニのバイトで糊口をしのぐ。
犯人の松田も序盤から登場する。歪んだ心が犯罪を起こす。
3人に共通しているのは、過去の出来事がトラウマになっていること。
朝山は中学時代の事件を引きずっている。潤平は第二走者を失った。
松田は家庭環境が酷かった。
宮部みゆきは欠損家族を描くことが多かったが天童も同じ。
女性監禁事件ということなら、「模倣犯」もそうだった。
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家族とつながりについては天童にとって大きなテーマ。
この作品は「永遠の仔」にもつながる。
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アマゾンの評価はとても高かった。
それだけに期待が大きすぎたのか、不完全さが目立った。
朝山の隣人、京子に続いて朝山までが誘拐されるというのはご都合主義。
狭い中で事件が起きすぎる。
朝山の設定もアセアン同好会の意味がない。
後になってインターハイとか、とってつけたような部分もどうかと思う。
負傷した潤平の表現で「手を直す」は「治す」。
「首を吊ったことがある」は「吊ろうとしたことがある」のはず。
編集も気がつかなかったのだろう。大幅に加筆したことがよくわかる。
天童ほどの作家であれば、この程度の作品で感心してはいけない。
だが、マイナス点を差し引いても天童には訴える力がある。
初期の作品を読むのは、後の作品のプロトタイプということで興味深い。
追記
ジミヘンが「地味に変態」というのは天童の作品に珍しく笑えた。
都会の孤独さを描いた作品だけに、オアシスのように感じた。
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「ジミヘン」が「地味で変態」そうそう、ありました。私も笑いました。
この作品は、引き込まれて読みましたが、読後感があまりよくないです。
家族関係がトラウマというのは、よくある話でしょうが、重いですね。
無事、TBは届いています。
読後感がよくないのは、天童の作品ではよくあります。
「永遠の仔」では、家族関係のトラウマがあまりに重くて読むのが苦しいとさえ感じました。
そうした重いテーマこそ、天童が真正面から受け止め描く世界なのでしょう。
今後ともよろしくお願いします。