人気シリーズ第三弾。
「初湯千両」
寅が主役のエピソード。
大晦日、寅と松は銭湯へ向かう途中イサオという少年に出会う。
彼は湯に入るための銭を失くしていた。
寅がその金を払い、事情を訊くと父親はシベリアで戦死したという。
貧しい母子家庭を救うため、寅は陸軍大臣の家に忍び込む。
かつて軍曹だった寅の情が光るいい話。
「共犯者」
書生常次郎が主役のエピソード。
宮家の姫君と東京に向かう列車内で会った海運会社社長の榊原。
これにはやられた。見事としか言いようがない。
何しろ安吉親分でさえ常次郎の仕業ではないと言い張るくらい。
私も含め、読者がだまされるのは当たり前。
「宵待草」
おこん主役のエピソード。
竹久夢二がおこんにモデルとならないかと声をかけた。
天才はやはり普通の人とは違う。
私は生まれ変わっても天才にはなれない。
「大楠公の太刀」
栄治主役のエピソード。
肺病(結核)で余命の短い小龍(宮子)。
彼女の源氏名は、伊藤博文が命名した。
その源は明治天皇が守り刀とした小龍景光。
栄治は彼女に名刀を見せたくて計画を立てる。
親方の安吉は、ある人に相談する。
再度登場した永井荷風に加えて森鴎外。
なかなかの豪華キャスト。
「道化の恋文」
康太郎に仁太を紹介された松。
仁太の父親はサーカスのピエロ。
秀才であるだけでなく、体操も大車輪などをこなす仁太。
その仁太に学習院のお嬢様から恋文が届く。3人は永井先生に相談する。
慶応で教えている永井が3人に論破される場面は笑った。
仁太の父は肺病をおして最後の舞台に立つ。
父親にはっきりとものを言う息子の姿には涙が出た。
「銀次蔭盃」
松は杯を二つ持っていた。
ひとつは安吉親分からもらった素焼の質素なもの。
もうひとつが今回語られる銀蔵のものだ。
上野駅で再び逮捕された銀次。
網走刑務所に収監されている彼を、安吉親分と松が面会に訪れる。
銀蔵と安吉。そして安吉と松。
二つの親子関係が泣かせる。
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解説は2012年12月に亡くなった十八代目中村勘三郎。
時代小説だけに、役者が書くというのはいいアイデア。
勘三郎は、浅田が河竹黙阿弥を読んでいると明言。
その予想は当たった。忘れるといけないので記録として残しておく。
このシリーズ、第五弾まで出ている。
安吉一家は次にどんな活躍をするのだろうか。
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