第147回直木賞受賞作。
【送料無料】《第147回直木賞受賞作品》鍵のない夢を見る [ 辻村深月 ] |
辻村の作品は、出世作の「ツナグ」、そして「ぼくのメジャースプーン」。
デビュー作「冷たい校舎の時は止まる」などを読んできた。
「仁志野町の泥棒」
バスツアーに参加した主人公のミチルは、バスガイドが律子であることを知る。
律子は小3の頃、転校してきた。
母親が泥棒だという話が噂として広がる。
その噂は本当だった。しかも、娘の律子が万引きする場面に出くわす。
生理と盗癖の関係は、女性作家でなければ描けないだろう。
読んでいて痛くなる話だが、辻村の作家としての力量がよくわかる作品。
「石蕗南地区の放火」
短大を出て16年、共済支部に勤務する笙子が主人公。
彼女の実家のすぐ近くで起きた火事は放火だった。
消防関係者が放火犯人だったという話は何度か報道されたことがある。
もちろん、インパクトがあるからこそ注目される報道になる。
「美弥谷団地の逃亡者」
主人公は美衣。陽次と千葉にやって来た。
このエピソードはDVが背景にある。
DVの経験者は、この作品を読んで「そうなのよ!」と叫んだかもしれない。
日本中にこうした経験者がどれくらいいるのだろうか。
「芹葉大学の夢と殺人」
主人公は大学を出て高校教師となった未玖。
彼女は大学時代の恋人、雄大がいた。
最初に教授の死があり、未玖が重体となっている事実。
これはどうして起きたのか、「捻り」になっている。
「君本家の誘拐」
主人公は良枝。
ショッピングセンターで娘を乗せたベビーカーが見つからない。
焦った良枝は警備員に言われて一度家に戻る。
携帯電話を忘れてきたためだ。
この作品も、多くの育児経験者から同意を得そうだ。
育児に非協力的な夫の姿はかなり耳が痛い。
辻村だけでなく、作家は時に「人の壊れかた」を作品に残す。
それは、実際に起こりうること。世に狂言犯罪が多いのがよくわかる。
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この本を読んだ人たちの何割かは、「これが直木賞でいいのか?」と感じたはず。
もちろん彼女の文章は意味不明な所もあるし、荒削りでもある。
だが、不完全な登場人物を描きながら現代社会の不安を作品として残す。
その視点がいい。
作家が壊れているのではない。
現実に壊れた状態がある。ただそれだけのことだ。
彼女の手腕は「気持ち悪さ」が欠かせない。
男女で感想も大きく異なるはず。そのギャップについてはとても興味がある。
最初にも書いたが、女性らしい視点がとても新鮮。
今後、彼女がどのような引き出しを持っているのか楽しみでもある。
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