近未来SFの秀作。原題”On the Beach”
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核戦争後、北半球では放射線が強すぎて人が住めなくなった。
アメリカの潜水艦スコーピオン号は、オーストラリアに避難する。
タワーズ艦長は、祖国に妻と娘を残してきた。
ある日、電波がオーストラリアに届く。
発信源を突き止めるためスコーピオン号は出港。
カナダとアメリカの国境近くで確認作業するスコーピオン号。
しかし、その地も放射線が高く防御服を着た士官が確認したところ人間はいなかった。
北からゆっくりと、しかも確実に迫ってくる放射線。
地球最後の日に、あなたならどう過ごすか。
タワーズ艦長はマス釣りしたいと思うが解禁前ということで一旦は諦める。
世界の滅亡を前にしてもなおルールを守るという彼の姿勢。
淡々としているだけに余計悲しい。
また、娘にホッピングをプレゼントしようとするタワーズ。
メルボルンでホッピングを探すが見つからない。
噂を聞いたモイラが艦長にプレゼントする。
酒ばかり飲んでいたが、その後習い事にも出かけるようになったモイラ。
モイラという名はギリシャ神話で「運命の女神」。
タワーズとの結婚を望みながら、それを果たせない。
これも作者の皮肉なのだろう。
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もし、世界の終わりが数カ月後に迫ったとして。
あなたは幼い子を殺すことを選択するだろうか?
東日本大震災の際、暴動が起きない日本人を見て世界中が驚いた。
世界が滅亡する場合でも、それは同じか。
この作品の世界。
それは、「日本沈没」と並ぶ小松左京の代表作「復活の日」に引き継がれている。
潜水艦で「死の町」を見に行く場面などはそのまま。
皮肉なのは、原潜に頼らなければ偵察にも行けないところ。
核で滅んだのに、核を使わざるを得ない人類。
ディーゼルだと定期的に浮上しなければならない。
この作品が恐ろしいのは、「こんなこと起こるわけがない」と言えないところ。
世界を何度も滅亡させるだけの核兵器が21世紀の今日も存在している。
オバマが「核なき世界」を訴え、ノーベル平和賞を受賞した際。
「核兵器廃絶は世界の平和を崩壊させる」と冷たく突き放した人がいた。
国連安保理「核なき世界」決議
その反面、「宇宙戦艦ヤマト」やこの作品。宮崎駿の「ナウシカ」も核戦争後の世界。
「復活の日」など、世界の滅亡を描く表現者たち。
地球人というのは本当に変わっている。
映画にしろ小説にしろ、世界の滅亡に危機感を持たず「娯楽」でしかないのだから。
50年代、60年代から人類は進歩してしていないのだろうか。
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