添乗員の経験がある垣根の出世作。
大藪春彦賞、吉川英治文学賞、日本推理作家協会賞をトリプル受賞。
ワイルド・ソウル 上 |
垣根の作品は「ヒートアイランド」「午前三時のルースター」以来。
海外が舞台、暴力と犯罪の匂いがするのは相変わらず。
衛藤は妻と弟とブラジル移民に応募する。
現地で待っていたのは、まったく整備されていない原野だった。
妻と弟は相次いで黄熱病に倒れ亡くなる。
領事館は移民に対し犬同然の扱いしかしない。
一緒に移民してきた野口夫妻。
奥さんの病気を救ったということで衛藤のことを恩に思う野口。
しかし後に衛藤が尋ねた際、野口夫妻はすでに死亡していた。
啓一(ケイ)という少年を残して。
宝石商の裏で麻薬の密売を行っている松尾(ノブ)。
山本、ケイとともに復讐計画を実行する。
ワイルド・ソウル 下 |
後半、重要な登場人物といえば報道番組制作者の貴子。
ケイと男女の仲になる。
女性読者から見て、ケイは魅力的なんだろうか。
それとも単なるバカ?
計画はうまくいったかと思われた。
しかし山本が空港で倒れ、パスポートから犯人グループの一味だと分かってしまう。
まさに「渾身の力作」と言える大長編。
この作品が多くの読者に高く評価されているのはよく理解できる。
南米やNシステムなど、作者はどれだけの取材を重ねてきたのか。
それを考えるだけでも読む価値がある。
厚い本なので尻込みしていたが、このリーダビリティはさすが。
行間に麻薬でも仕込まれているんじゃないか。
単に復讐劇ではなく、「大地の子」「沈まぬ太陽」(山崎豊子)を思い出させるドラマ。
読んで損はなかった。それだけは自信を持って言える。
作品でも触れているが、ドミニカの日本移民も酷い話だったという。
事実として、日本政府はこんなことをしてきた。そのことは忘れまい。
そういえば、北朝鮮への帰国事業も「地上の楽園」と賛美していた人はいたんだよね。
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