私にとっては「とっておきの1冊」。
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上 先生と私
鎌倉の海岸で知り合った「私」と「先生」。
世の中に出ようとしない「先生」の自宅に何度も通う「私」。
「先生」に何があったのか。時期が来たら話すという。
「私」は郷里の父親が病気なのが気になる。
中 両親と私
大学を無事卒業した「私」。田舎に帰る。
父親の病気は進んでおり、かなり衰える。
卒業祝いをすると言い出す父。
しかし明治天皇が病気となって自粛することに。
そんな中、「先生」から厚い封筒が届く。
急いで汽車に乗り、東京へ向かう。
下 先生と遺書
「恋は罪悪」という「先生」の言葉は何を意味するのか。
遺書でそれが分かる。
学生時代の「先生」は、「K」の窮状を見かねて下宿で一緒に住むようになる。
「K」は僧侶の次男だったが養子となり姓が変わる。
養家からは医者を目指すよう求められるが、「K」は内緒で別の学部に行く。
そのことが発覚し、勘当を言い渡される。
「先生」の下宿先は亡くなった軍人の家で、未亡人の他に娘さんがいる。
「K」と「先生」が「御嬢さん」との三角関係を形成する。
若かった「先生」は、「K」を出し抜いて未亡人に御嬢さんとの結婚を申し出る。
未亡人はこの申し出を承諾。
しかし「K」はその後すぐ頚動脈を切って自殺した。
遺書には「先生」の裏切りについては書いてなかった。
それでも「先生」は罪悪感でいっぱいに。
「K」から御嬢さんへの想いを打ち明けられた際。
「実は私もそうなんだ」と言えればよかった。
しかし、タイミングを失った「先生」は裏切り行為に出る。
若いからどちらも青いなあ。でも、その青さは必要なんだ。
「あの時ああすればよかった」と思う人は、漱石の時代も今も多く存在している。
だからこそ、この作品は生き続ける。
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「先生」が自殺する時期について
「何故今か」という問いは残る。
しかし、「先生」は「K」の死後、いつでも死ねた。
「私」と出会ったことでその時期が来たと考えたのか。
漱石自身は乃木希典大将が明治天皇の死後、殉死したことに触発されたという。
将軍の後追い自殺を「至誠」と表現している。
私にはこの感覚が理解できない。自殺は何の解決にもならない。
しかし、それは私が平成の世に生きているからなのかもしれない。
もし私が明治に生きていたら、乃木殉死を理解できたのかも。
何故、「私」に自分の過去を書き残したのか
まず、「私」が「先生」の過去について質問したことが大きい。
妻にも話せなかったことを、「先生」は話したくて仕方なかった。
もうひとつは、「先生」は「私」の中にかつての自分を見ていたという考え。
これは十分考えられる。
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「精神的に向上心のない者はばかだ」という言葉。
自分が発した言葉で切り返されると辛いなあ。
最初に「とっておきの1冊」と書いた。
いつかは読まねばならない本という意味だ。
よく、「もっと前に読んでおけばよかった」という意見を耳にする。
しかし、私はそう思うことが少ない。
本を読むか否かは運でもある。
運があれば読む。読みたくても読めずにいる本はたくさんある。
この作品、青空文庫でネット上に公開されている。
「こころ」夏目漱石
無料で読みたい人はどうぞ。
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