2013年11月26日

「名作うしろ読み」斎藤美奈子

名作と呼ばれる作品を取り上げた本。
読売新聞夕刊連載の書評をまとめたもの。かなり辛口。
 
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本を読む場合、「名作」と呼ばれる本なら多くの人が読んでいる。
共通の話題になるのは時代の流れにも負けず、多くの人が求める作品だから。

確かに、私が芥川賞受賞作を読むのは他の人がどう考えているか。
それを確かめるという意味がある。

この本が読書案内として優れているのは、「知ってるつもりで読んでない本」。
これを多く取り上げているから。

確かに「友情」(武者小路実篤)や「紀ノ川」(有吉佐和子)。
「白鯨」(メルヴィル)、「死の棘」(島尾敏雄)など私は読んでいない。

この本では、以下のように作品を分類している。
「青春の群像」「女子の選択」「男子の生き方」「不思議な物語」
「子どもの問題」「風土の研究」「家族の行方」

では、各作品に触れてみる。

「動物農場」(ジョージ・オーウェル)における斎藤氏の指摘は妥当。
この作品は、多くの読者が恐怖を感じるはず。

もし恐怖を感じないのであれば、その人こそ支配者ではないか。
風車を原発に例えるなど、なかなか冴えている。

逆に、斎藤氏の意見に賛成できない作品ももちろんある。
たとえば「異邦人」(アルベール・カミュ)。

斎藤氏は主人公ムルソーについてこう語っている。

「プレゼンテーションが下手な普通の若者なのだ」
(P31)

この考えには賛成できない。
彼は射殺の際、最初の銃弾を放った後、時間を置いて4発を発射した。

普通の人間であれば、人に向けて銃を撃ったりしない。
少なくとも最初の銃声で恐怖を感じるはず。
計5発放った時点で「殺意あり」と判断されても仕方ない。

単に法廷でプレゼンテーションが下手だっただけではないのだ。
この件については作品の中でも予審判事がムルソーに問いかけている。

もうひとつ、「赤毛のアン」(モンゴメリ)について。
斎藤氏はこの作品に多くの続編があることについてこう書いている。

「ほどほどの幸せに興味がある方はどうぞ」
(P77)

これも賛成できない。ここで辛口になる必要があるのか。
アンは孤独な身の上で、グリーンゲイブルズにやって来た。

老兄妹に引き取られ、過ごすこと自体が彼女にとって奇跡ではないのか。
だとしたら、斎藤氏にとっての「ほどほどの幸せ」はアンにとって最上の幸せ。

斎藤氏から見た幸福と、アンから見た幸福はまったく違う。
多くの読者(斎藤氏を除く)はアンの気持ちになって読むからこそ感動できる。
よほど斉藤氏はリアルな部分で不幸なのだろう。

立場で感じ方が大きく異なる。これは読書の基本だ。
斎藤氏が基本をおろそかにしていることが残念。

村上春樹は「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」でこう述べている。

「読書なんて結局は偏見の集積ですから」
「誤解の総体が本当の理解」

(本文より引用)

辛口批評は時に興味を持って受け入れられる。
しかし、少し間違えると書評を読んでいて嫌になる。

***** **** ***** ****

名作は、どうして名作と呼ばれるのか。
この本の巻末にそれは以下のように書いてある。

「お尻がわかったくらいで興味が半減する本など、最初からたいした価値はないのである」
(P290)

この意見には一理あるかのように一瞬、私は錯覚した。
しかし本書で紹介されているケストナーは「点子ちゃんとアントン」で述べている。

本は最初から読むようにできており、「知りたがり」は間違っている。
(彼の母が「知りたがり」だった)
彼の作品を引いておきながら、その精神は無視するのか。

実例で証明しよう。

例えば「八十日間世界一周」 (ジュール・ヴェルヌ)。
フィリアス・フォッグが賭けに勝つか否か分かってしまったら。
興味が半減するに違いない。この作品は名作ではないのか。 

推理小説になると、この傾向は顕著だ。

「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」(アガサ・クリスティ)も同じ。
結末がわかってしまうと面白くない。

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紹介された作品のうち、読んだ本もあれば読まない本も結構ある。
今後は古典と呼ばれる作品をもっと読むようにしよう。

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