2013年11月21日

「終わらざる夏」浅田次郎

終戦直後に北の孤島、占守島で戦った兵士たちの物語。
悲惨で壮大なるドラマを浅田が描く。
   
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ミッドウェーでの敗北から敗戦が確実な1945年。
北の島で何が起きたのか。

話が長いので、各登場人物をじっくりと描いている。
だが浅田は読者を飽きさせない。千人針の場面では不覚にも泣いてしまった。

10代の読者は、千人針が理解できないかもしれない。私も詳しくは知らなかった。
「死線を超える」という意味から五銭を縫い付けるのは初めて知った。

寅年なら、年齢だけ縫うことができるのも知らなかった。
この点だけ見ても、戦争の記憶が風化していることが分かる。

通訳として呼ばれた45歳の片岡。
医専卒の菊池軍医、鬼熊こと富永軍曹が北に向かう。

占守島には精鋭の戦車部隊がいた。
満州から移動した彼らは、アメリカ軍対策として島を要塞化。

しかし、大本営の読みが外れてアメリカ軍は来ない。
本土決戦に再移動しようにも、船すらない。制空権や制海権もない。

加えてこの島には女学校を出たばかりの挺身隊員が約400人いた。
鮭の缶詰工場に勤務していた彼女たちを安全に逃がすことが求められた。

戦争は、兵士だけに関係したものではない。
兵士の妻や、赤紙を届ける役目の少年までも巻き込む。

占守島が出てくるのは200ページを過ぎてから。
歴史についてはこのページに詳しく出ている。

戦車乗りを目指す少年兵など設定はとてもよくできている。
人の描写はさすが浅田だ。
   
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疎開先で片岡の息子、譲は母久子からの手紙を受け取る。
そして脱走。静代とともに歩いて信州から東京を目指す。

小山が言う「訓導は神」というのは明らかに間違っている。
人は神になれないし、戦時中に天皇を差し置いて神になろうという考えが解せない。

「星めぐりの歌」はこれ。作詞作曲は宮沢賢治。

 

船舶を操る歴戦の岸上等兵など、脇役も細かく描かれている。
その一方で、疑問点も多い。

たとえば吉江少佐。
身分を隠して抑留生活を送るが、自決することは考えなかったのか。

「自決は無責任」「責任を取りたい」という気持ちはもちろんあったのだろう。
だが密告により拷問にかけられれば、他の兵士も命の危険があったはずだ。

ロシア語ができる人物がいないのも解せない。
場所柄ひとりくらいはいてもいいはずだ。

8月15日を迎え、玉音放送を聴くがその後戦闘に。
敵はアメリカではなくソ連だった。
   

各登場人物がとても丁寧に描かれているのは流石。
しかし、惜しいことにどの人物も「いい人」過ぎる。

物語に集中したため、話にリアリティーがなくなるのはとても残念。
せっかくの長編なのにもったいない。

戦争は大いなる無駄の結晶だ。兵士や一般人の命が失われる。
本書でも、少しだけ触れている樺太も悲惨だった。以下のページが詳しい。

九人の乙女の碑「皆さん、これが最後です。さよなら、さよなら・・・」

長く、多くの怨念がだけが残る。それが戦争。
それでもこの作品も「永遠の0」と同様「右傾エンタメ」として批判されるのだろうか。

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