日本で5歳まで育ったイギリス人ブッカー賞作家、カズオ・イシグロの作品。
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原題「Never Let Me Go」。主人公は介護人で語り部のキャシー・H。
閉鎖された環境にあるヘールシャムで提供者の世話をしていた。
キャシー以外の主な登場人物はルースとトミー。
癇癪持ちのトミーは、絵を描かない。
子どもたちは、何故ヘールシャムにいるのか。
100ページ近くになってその謎が明かされる。
マダムと展示館の謎は終わりまで明かされない。
以前読んだ村上春樹のインタビュー集「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」。
その中で、春樹がこの作品を絶賛していた。
そうでもなければブッカー賞受賞作であっても読む優先順位は低かっただろう。
5歳まで日本で育ち、父親の仕事でイギリスへ渡ったイシグロ。
静かだが確実に寄せるこの感情の流れは何なんだ。
世界のどこかで「移植用」として育てられている人間はいるのかもしれない。
人間の「養殖」として。
未来のない、子孫を残すことが不可能な人たちがいるのかもしれない。
「そんなことは絶対起きない」と言い切れないのが怖いところだ。
あの、悪夢のようなホロコーストを実現した人類なのだから。
ある医師は言う。
高額な医療費を払う人に高度な医療が行われるのは当たり前だと。
ならば、臓器もそうなのだろうか。
しかし、この作品で描かれているのは生徒間の人間関係。
教師の苦悩ももちろん出てくる。
これってSF?
ヒューゴー賞でなくてブッカー賞最終候補?
村上春樹はエルサレム賞授賞式のスピーチで語った。
「作り話を現実にすることによって、小説家は真実を暴き、新たな光でそれを照らすことができるのです」
(赤字部分、このページから引用)
文学が人間を描くものであるのなら、この作品はまさしく文学している。
私はこの作品を読むことにより、新鮮な感覚を植えつけられたようだ。
この作品は2010年に映画化された。これが予告編。
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カズオ・イシグロの代表作(ブッカー賞受賞作)といえばこちら。
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近いうちに読みたい。
書評(作家別一覧)
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