2013年09月22日

「ベルリン飛行指令」佐々木譲

真珠湾攻撃前、日本のゼロ戦がベルリンを目指して飛び立った。
読んで損はない力作。
   

佐々木譲の作品は、「制服捜査」「廃墟に乞う」に続いて2作目。
時代小説は初めて。かねてからこの作品については高い評価が耳に入っていた。

舞台は1940年。
英国と戦争中のドイツ軍は、主力機メッサーシュミットが苦戦していた。

日独伊三国同盟を盾に。ドイツは日本の新型機「零式艦上戦闘機」を要求。
エースパイロットがテストした後、ライセンス生産するか否か決めるという。

海軍省副官の大貫と山脇は、問題児であるパイロット安藤と乾にこの件を託す。
訓練の後、二人はベルリン目指して飛び立つ。

台湾、ベトナム、インド、イラクと給油を繰り返し、トルコからイタリア、そしてドイツへ。
各地での思惑が絡み、苦しい旅を続ける。

以下のセリフが秀逸。

「わたしは軍人である前に飛行機乗りなのです」
(文庫P189)

「わたしは蛮行と愚行のどちらかを選べと言われたら、ためらうことなく愚行を選びます」
(同じく文庫P270)

「生き延びたいのなら、臆病になれ」
(同じく文庫P381)

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歴史に「もし」はないという。
しかし、その「もし」を空想することは楽しい。

この作品を読んでいて、「永遠の0」を思い出した。
脱出したパイロットを撃つか否か。

安藤は撃たない。宮部久蔵は撃つ。
傭兵を描いた漫画「エリア88」(新谷かおる)でも、ベトナムのパイロットは撃っていた。

「生き延びたいのなら、臆病になれ」という安藤のアドバイスはまさに宮部の考え。
軍人らしくない考えこそ、人間的で興味深い。

ジブリアニメ「風立ちぬ」の堀越二郎が設計したゼロ戦。
いろんなところでドラマを生み出していたはず。
ついでに言うなら、アメリカ人パイロットとの「私闘」は「紅の豚」を思い出す。

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佐々木譲:ベルリン飛行指令  

読書感想文 2010.6 「ベルリン飛行指令」(佐々木譲)

佐々木譲 ベルリン飛行指令

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