ひとりずつ殺されてく異色ミステリー。ネタばれあり。もちろん再読。
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原題 AND THEN THERE WERE NONE
言わずと知れた、アガサ代表作のひとつ。
招待されたのは、互いに面識のない人たち。老若男女、いろいろ。
しかし招待した島の持ち主、オーエン氏は姿を見せない。
執事さえ、会ったことがないという。
この10人は、それぞれ過去に人が死んだ件に関係している。
そして、毎朝来るはずのボートは来ない。
10人のインディアンの歌(マザーグース)どおり、殺されていく招待客。
ひとり死ぬと、人形がひとつなくなる。
互いに疑心暗鬼、死への恐怖を味わう客たち。
なぜ今になって再読したか。
それは、先日読んだ「ノックス・マシン」(法月綸太郎)に関係している。
「引き立て役倶楽部の陰謀」に、この作品が批判の対象として出ているからだ。
もちろん法月が批判しているのではなく、フィクション。
疑問点は多くある。
まず、残ったひとりは本当に自殺するのだろうか。
残念(?)なことに、これを証明する実験は行えない。
全てが空想の中でのこと。だが、非日常のさらに特殊な事情では、自殺するのかも。
それ以前に、10人が招待を受けるというのが非現実的。
だが、小説は(特に推理小説)面白ければそれでいい。
先日も書いたが、横山秀夫の大ヒット作「半落ち」は直木賞受賞はならなかった。
「致命的欠陥がある」という指摘をある選考委員がしたためと言われている。
ならば、某選考委員は「そして誰もいなくなった」にも批判的なんだろうか。
そんなことしたら、推理小説はみんな否定されるだろう。
やはり「アンフェアだ!」と批判された「アクロイド殺し」。
そして本作品。アガサは今までの作品を打破するような挑戦をし続けた。
この勇気こそ、彼女が他の作家にはない部分。
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私が読んだのは、少し古いハヤカワ文庫(清水俊二訳)。解説は、あの赤川次郎。
どれだけこの作品が彼の目標になっているかを力説している。
「過不足ない描写」という点を高く評価しているのは私も同感。
推理小説に限らず、説明でない描写こそ全ての小説に求められていると私は考える。
新訳も出ているが、アマゾンの評価は低い。
私は読む気がしなくなった。
私が初めてこの作品を読んだのは、中学2年の頃。
「これは只者ではない!」と感じたのを今でもよく記憶している。
再読してみて、私はアガサのメッセージを感じる。
ポアロ最後の事件となった「カーテン」。
そして同じくポアロが事件に挑んだ「オリエント急行の殺人」。
この両作品と「そして誰もいなくなった」には共通点がある。
それは、「法律によって裁けない悪は、別の方法で裁く」というもの。
もちろん、本作品による「裁き」は「正義の行い」ではなく賛同できない。
それでもアガサのメッセージとして永久に残るに違いない。
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