この作品、いつ読んでも素晴らしい。
【送料無料】錦繍改版 [ 宮本輝 ] |
蔵王で10年ぶりに再会した元夫婦。そこから手紙のやりとりが始まる。
これは14の手紙だけで成り立つ珍しい小説。
浮気相手が無理心中を決行。それにより、夫婦の間にも溝ができる。
若かった妻は、素直になれなかった。同じく夫も素直になれなかった。
夫は妻の父が社長をしていた建設会社の後継者として期待されていた。
それだけに、事件への影響は大きかった。結局、二人は離婚する。
元妻はモーツァルトが縁となって学者と再婚。しかし息子は障害児だった。
加えて新しい夫は教え子と不倫をし、子どもまでいる。
宮本輝の最高傑作は何か?
まだ生きている以上、「次回作が最高傑作」となるべき。
しかし、今の時点なら間違いなくこの「錦繍」を選択する人は多いはず。
私にとっては「蛍川」だけど。
書簡体ということで思い出すのは、「往復書簡」(湊かなえ)。
ネットの登場により手紙を書く人が減った今、こうした作品はなくなりつつある。
印象深いのは、以下のセリフ。
「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれへん」
(本文より引用)
このセリフを書く度に思い出すのがこれ。
死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
(村上春樹「ノルウェイの森」上巻より引用)
春樹と宮本に共通しているのは。
「喪失と再生」を描いているという点。
レジ打ちをしていた平凡な女性、令子による以下の言葉も忘れられない。
「うち、あんたの奥さんやった人を好きや」
(同じく本文から引用)
いくらネットが普及したとしても、こうした作品は時代に逆らって生き残る。
私はそう確信している。
宮本輝に言いたい。
この「錦繍」以上の作品を出して見せてくれ。
まだ作家として活動しているのならば。
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