2013年08月07日

「幻の光」宮本輝

前回の「螢川/泥の河」に続いて宮本作品を久しぶりに再読。
この短編集も完成度が高い。
   

「幻の光」

自殺で前の夫を失った女性がモノローグで淡々と語る。
そして元夫に語りかける。
女性は兵庫県尼崎から奥能登の寂れた町に嫁いできた。

自殺者が3万人を超えていた日本だからこそ、こうした作品は必要。
過不足ない描写が読者をひきつける。私には逆立ちしても書けない作品。
宮本は男なのに、どうして初潮の話を詳しく描けるのだろう。

「夜桜」

舞台は神戸。
主人公は息子を交通事故で失った綾子。

浮気が原因で離婚した前の夫が訪ねてくる。
下宿者募集の張り紙を見て、元夫は反対する。

しかし、電気工事に詳しい若者がやって来て、泊めることにする。
ところが彼は一人ではなく、女性と一緒だった。

この作品でも、50歳の女性を上手く描いている。
更年期障害特有のホットフラッシュらしい症状や月経が止まった様子が出てくる。
女性から見ても、こうした描写は自然と受け止められるのではないか。

「こうもり」

大阪駅で、高校時代の同級生松岡と10年ぶりに出会う主人公の男。
彼には妻や子があったが、洋子という不倫していた女性がいた。

主人公は彼女と旅行するため大阪駅に来たのだった。
そして高校時代、問題児だったが人気者だった「ランドウ」の死を知る。

主人公はランドウと二人である女の子を探したことがある。
そこは、大阪港に近い寂れた場所だった。

この作品、新潮社の全集(第13巻)では冒頭の大阪駅での場面が削除されている。
全集ではいきなりランドウのことが描かれる。

「寝台車」

大切な契約をまとめる出張で東京へ寝台車で向かう主人公。
老人の泣く声を聞き、列車事故で亡くなった同級生とその祖父を思い出した。

会社のため、技術者だった主人公は営業に異動となる。
大手商社からやって来た上司。

回想の部分がやや唐突な気がする。
しかし、人の記憶というのは不思議なもの。
何しろ、紅茶にマドレーヌを浸した瞬間、記憶がよみがえる人もいるのだから。

東海道を走る寝台特急が次々と廃止になった今。
物事を考える機会が失われたのではないのか。
何でも急ぐ時代に、疑問を感じる。

***** **** ***** ****

宮本作品の多くに、死が背景にあるのはどうしてなのか。
結核で苦しんだから。それもあるが、人を描くのに死は欠かせないから。
私はそう考える。

この作品、映画化されている。

 

監督は是枝裕和。
出演は江角マキコ、浅野忠信、内藤剛と豪華。

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『幻の光』宮本輝  

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