質の高さは色褪せていない。
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「泥の河」
太宰治賞受賞作。舞台は昭和30年の大阪。
まだ戦後が生々しい時代。
食堂を営む両親とともに、安治川の河口近くで暮らす小学生の信雄。
上流から一艘の船がやって来る。
船で生活していたのは喜一とその姉。
そして母親の3人。母親は体を売って生活の糧としていた。
やがて喜一の乗っていた船は移動する。
お化け鯉がいることを喜一に知らせようとする信雄。
この作品、小栗康平監督の映画もよく知られている。
田村高廣の手品は印象深い場面。加賀まりこの演技も素晴らしかった。
もらった小銭を、縁日で落としてしまう場面。
蟹に火をつける場面など、白黒映画なのにとても鮮やか。
この作品は、人の死が背景に大きく関わっている。
馬で荷物を運ぶ途中で死んだ男。
ゴカイを採る際に行方不明になった老人。
戦後が色濃く残っていることから、「第3の新人」と重なる部分も多い。
「螢川」
芥川賞受賞作。
舞台は富山。主人公は14歳の竜夫。同級生の英子が気になる。
父親はタイヤを元に派手に稼いでいたものの、落ちぶれる。
そしてある日脳溢血で倒れ、糖尿病もあり衰え亡くなる。
父親の存在は、自伝的作品「流転の海」と同じ。
両作品を読んだ人ならすぐに分かる。
残された後妻の千代と竜夫。
「4月に大雪が降ると、蛍の大群が現れる」という銀蔵の話。
その蛍に人生を賭けてみようとする千代。
英子と銀蔵、母子の4人で蛍を見に行く。そこには多くの蛍がいた。
ここでも人の死が物語に大きく影響している。
父親と、英子を好きだった少年の死。
この二つの死は、生きている蛍の「生」と対極をなす。
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再読すると、文学としてのバランスが素晴らしい。
「説明でなく描写」が素晴らしくできている。
「錦繍」もいいが、私は「螢川」こそ宮本の最高傑作だと思っている。
以前、タイ北部で蛍を久しぶりに見た際、この作品を思い出した。
今後も蛍といえば、この作品を思い出すに違いない。
いい作品は、読者の心に深い印象を残すもの。まさにこの作品がそうだ。
こうした作品たちを忘れない
これぞ哀切な情景を表現した日本文学!
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