意地悪な彼女に、周囲は振り回されっぱなし。久しぶりの再読。
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つぐみのことを語るのは、大学生のまりあ。
父親が前の奥さんと離婚の相談をしている。
その間、母親と一緒につぐみの家が経営している海辺の旅館に身を寄せていた。
つぐみには、陽子という姉がいる。陽子、まりあ、つぐみと1歳違い。
まりあがつぐみと仲良くなったきっかけ。それは、手紙にまつわる事件だった。
祖父が亡くなったばかりのまりあ。
「お化けのポスト」にその祖父からの手紙が届いていたとつぐみは雨の中、まりあに知らせる。
ところがその手紙はつぐみが作成したニセ物だった。
ホテル経営者の息子、恭一と犬の権五郎と出会う。
夏に起きた事件は決して忘れられないものとなった。
以下の表現が印象に残る。
夜の道のそこかしこに、夏の影がひそんでいた。活気と夜気がどこか甘く、わくわくするような勢いで夜を彩っているのが、風の匂いひとつにもあふれるようだった。
(文庫P79より引用)
この表現だけで、作者はどのくらい頭を悩ませたのか。
すらすらと書けたわけではあるまい。
読者は作品を「消費」する。
簡単に書けた文章なら、一度読めば終わり。印象にも残らない。
(このあたりのことは、あとがきにも書かれている)
こうした部分は、少しでも記憶すべきではないか。
それが、読者としてすべきことと私は考える。
***** **** ***** ****
つぐみのキャラクターは年齢もはじけ方も違うが、
「ミーナの行進」(小川洋子)を思い出す。
セミは、地上に出てから2週間ほどで死ぬと言われている。
つぐみは、他の人から見れば時間の流れがまったく違っていたのだろう。
文学が、「人の生死」を大きなテーマにしているのであれば。
この作品はまさしく文学している。出来過ぎの感はあるが、細かいことは気にしない。
今回、ふとこの本を手にして久しぶりに読んでみた。
再発見した部分が多く、別の作品も読んでみる必要があるように感じた。
決して語彙が多いわけではない。稚拙な部分も多くある。
しかしいつまでも読んでいたい世界。それを描くのが彼女は上手い。
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