恥ずかしながら、藤原作品を読むのは初めて。一部ネタばれあり。
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「ダナエ」
個展を開いていた若き画家の宇佐美。
彼の作品が、薬品をかけられ台無しになった。
受付を担当していた女性二人に訊くと、バッグを持った若い女性が怪しいという。
画廊に電話がかかってきて、これは予告だという。
エルミタージュで起きたレンブラントの作品、「ダナエ」の事件を連想させる。
wikipediaによると、硫酸をかけ切りつけたのはリトアニア人の青年だとある。
読者の多くはすぐに犯人が誰か予想しただろう。
ミスリードが効果的な作品と言える。
犯人は誰なのか。なぜ作品を台無しにしたのか。
この展開、結末は読めなかった。
警察に知らせないという判断については疑問が残る。
やや荒さの残る展開ではなかったか。
ギリシャ神話について
この作品に描かれているペルセウスの話。
昔読んだギリシャ神話を思い出した。
不思議なことに、アポロンの放った円盤に当たったヒュアキントス。
彼の名前から「ヒヤシンス」の名前がついた。
まるで父親に当たったペルセウスの円盤とそっくりそのまま同じ。
神話、聖書などの話にはこうした類似点が多く見つかる。
作品に出てくる「サマータイム」はこれか。
「まぼろしの虹」
血のつながらない姉と弟。姉は29歳のサッカー選手。
弟は、CM作成会社勤務。
両親は離婚の危機にあった。
母親の不倫相手について、弟は仕事で知り合った声優から噂を聞く。
ひとつ苦言を。
最初に出てきたサッカーの場面。
サッカーを少しでもやったことのある人なら、ポストはニアかファーの区別はつける。
経験のある弟でなく、藤原が見ているのは明らか。
「水母」
映像クリエイターの麻生。森川という男に声をかけられ話す。
森川は、以前麻生が一緒に暮らしていた真弓と付き合っていた。
真弓は南陽大学の講師をしている。
何故か彼女は神保誠治に異常な反応を示す。
終盤、合成写真を作成しそれを利用するのはご都合主義ではないか。
人物を丁寧に描写している点は高く評価できるものの、やや疑問が残った。
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藤原は、07年に亡くなった。
才能ある人が早く「呼ばれる」事は多い。とても残念。
藤原といえば、直木賞受賞作「テロリストのパラソル」。
そして「シリウスの道」が知られている。
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「ダナエ」での質の高さを考えれば、読んでみたい。
59で亡くなったのは本当にもったいない。
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