横山秀夫とは違った警察官の視点。07年「このミス」第2位。
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「逸脱」
札幌で盗犯係や強行犯係をしていた川久保篤。
異動で慣れない田舎の駐在となる。
拳銃摘発の稲葉警部が起こした数々の不祥事。
そのために、無理な異動が道警では行われた。
行方不明になった少年と、バイク事故。
これからは、警察が出す数字を疑ってかかろう。
息子を失った母親は、今後どうなるのだろう。
死ぬまで警察には不信感を持つに違いない。
「遺恨」
ある家で飼っていた犬が、ショットガンで撃ち殺された。
事件のエスカレートを気にした川久保は、情報を集める。
中国人を研修生として使っていた牧場で、男が殺された。
研修生3人は姿が見えない。
「割れガラス」
少年を狙った恐喝の現場に居合わせた大工。
彼には傷害の前科があった。
割れ窓理論は、数年前から知られるようになった。
しかしこの作品に出てくる使われ方はどう考えてもおかしい。
「感知器」
今度は連続放火事件。
長嶺という刑事が捜査のため現地にやってくる。
無事に事件解決とはならないところが、この作家の力量。
事件がどこまで解決できるか、それは刑事の感知器しだい。
「仮装祭り」
13年前に起きた少女失踪事件。
そして、似た失踪が夏祭りの夜に起きる。
祭りで盛り上がる雰囲気と、誘拐事件だという臨場感の差。
このギャップが実に新鮮。
ギャップという点なら、地元住民と別荘族の摩擦。
そして警察に反感を持った住民たちとの関係も見事に描いている。
この話も、警察が数字をどう扱っているかという点を浮き彫りにしている。
報告がないというのは、決して安心できることではない。
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川久保は、妻と娘を札幌に置いて志茂別駐在所に単身赴任。
元郵便局員で事情通の男に協力してもらい、地元で起きる事件の真相を探る。
といっても、川久保は刑事ではなく駐在。
タイトル通り、制服での捜査はありえない。
この世には、「事件として扱われない事件」がある。
そう考えると、警察を見る目も変わる。
彼らも単なる公務員。
減点主義で、面倒なことはしたくない。
恥ずかしながら、佐々木譲の作品は初めて。
この密度の濃さなら、もっと読んでみたい。
次に読むとしたら、この作品か。
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北海道新聞だけでなく、こうした作品も道警叩きとして記憶されるのだろう。
もちろん裏金の存在は看過できないけれども。
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