校閲から運動部に異動となり、プロ野球のトライアウトを取材する。
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息子の考太は8歳。離れた実家で野球をしている。
父親が誰だか、可南子は両親にも告げていない。
可南子は9年前のスキャンダルの末、息子を出産。
それ以来、父の謙二とは仲が悪い。
トライアウトで可南子は深澤を見かける。
甲子園優勝投手だった深澤も、球団から自由契約を通告された。
可南子の父である謙二の死。店でバイトしていた耳の不自由な竹下の死。
柚奈と広海の結婚。どうも作者の都合で話が出来すぎている気がする。
謙二の死後、竹下の母親が尋ねてくる場面などは、どう考えてもご都合主義。
4年もの間、竹下の死を家族が誰も知らないのはおかしくないか。
耳が悪いだけでなかった竹下。
従業員として採用した彼の事情を可南子が知らなかったというのも腑に落ちない。
息子がトラブルを起こした件でもそれは同じ。
妹はどうして「同級生にケガをさせた」と教えなかったのか、疑問だ。
アマゾンの高評価を知り、この作品を読んだが正直物足りない。
題材はいいものの、その題材を活かし切れていない。どの場面も浅く軽い。
そもそも、プロ野球選手の深澤が、後輩の高校生相手に投げていいのか。
最近はアマとプロの交流が以前ほど問題にはならない。
高校野球の監督に元プロがなるくらい。大学でも元プロが教えている。
しかし、解雇されたとはいえ深澤は引退を表明せず、その後台湾で現役。
これって「あり」なんだろうか。
私が無知なのかもしれないが、気になる。
ひとつ、印象に残った表現。
「何で終わりがあるんだろう」
「終わりがなかったら全力出せないだろ」
(本文P238−239から引用)
野球も人生も、限りはある。しかしやり直しが可能。
作者の主張はそこにあると私は解釈した。
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藤岡の経歴は、とても変わっている。
同志社大を出た後、報知新聞に入社。
タンザニアの大学に留学し、日本で看護学校に行く。
看護師資格を取得した後、作家に。
可南子はもちろん藤岡の分身。
報知新聞にいた経験を元に、この作品を書いたのだろう。
藤岡の作品は、「いつまでも白い羽根」を読めばひとまず終わりか。
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