どのエピソードもかなりレベルが高い。
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「晴天の万国旗」
息子の光平は、運動会でリレーの選手に選ばれた。
だが、選手を降りたいと言い出す。母親は自分の経験を話す。
この作品、いくつかの学校で入試問題として使われたそうだ。
「葡萄の木」
家族でブドウを食べに一泊旅行に出かけることになった。
食事中も娘が携帯を使っていることに腹を立てた父は娘の携帯を折る。
互いに素直になれない父と娘。
希望が残る後味のいい作品。
「甘噛み」
子のいない夫婦はエアデール・テリアの子犬を引き取る。
妻は、血のつながらない母と犬を連れて、軽井沢へ旅行に。
「短い通知表」
妻が急死した中年の男。
彼の家では家族の通信簿を作っていた。
大掃除の際、妻のメモが見つかる。
「福は内」
出張の帰り、熊谷の実家に寄る男。
このところ、不運が続いている。
その後、実家の母から荷物が届く。野菜とともに升と豆があった。
その後、家族で豆まきをすることに。
「靴ひもの結び方」
グラウンド跡地にマンションを建設する計画。
主人公の赤木は責任者だったが、住民は説明会で反発する。
赤木は周という少年と出会い、キャッチボールをする。
周は足を引きずっていた。
息子が欲しかった赤木だったが、妊娠途中で失う。
そのことがきっかけで、妻との間に溝ができる。
この本の中で一番好きな作品。
監督はいい人だし、周はラーメンの味を忘れないだろう。
赤木の家庭はある意味、欠損家族。
だが、今後は娘や妻とうまくいくだろう。
「妻のパジャマ」
出向の話を受けた夫は帰宅時間が早い。
子が巣立ったこともあり、妻は離婚を切り出す。
そんな中、妻がぎっくり腰で入院。
夫は妻のパジャマを買う。
「荷物の順番」
兄と同居している母を、老人ホームに入れるという。
施設へ送る役目を兄から頼まれた主人公。
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この短編集に共通しているのは、家族。
もうひとつが「救い」。森はあとがきでこう述べている。
「救いのない世界を誰が望むだろう」
(あとがきから引用)
そのとおりだ。
向田邦子や重松清も家族を描く。しかし森は切り口が違う。
これより前に出た「家族の言い訳」が未読。
ぜひ読みたい。
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