2013年03月16日

「夜間飛行」アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ

南米、パタゴニアで危険な夜間の航空便を描いた作品。
作者は「星の王子さま」で知られるサン・テグジュペリ。
   

まず、この短い作品は深く私の記憶に残るだろう。
詩のようでいて、多くの教訓を含んでいる。

主な登場人物は社長のリヴィエールと飛行士ファンビアン。
まだ夜間飛行が危険だとされた時代に、南米で航空便を扱う。

リヴィエールは責任感の強い男。
異常なまでの冷徹さを見せ、古株の職員でさえ即事解雇する。

結婚して間もないファンビアンは、パタゴニア便に乗る。
しかし目の前には大きな雷雲があった。

引き返そうにも出発地にも嵐が到達していた。
何とか雲を抜けた機体は、静かな空を行く。

しかし、運命は非情だった。
混迷を極めたフライトにより、燃料は残り30分だけ。
それは、確実な死を意味していた。

***** ***** ***** *****

この作品について、多くの人が書評を書いている。
というわけで、私は違った面からこの作品を語りたい。

リヴィエールが福島原発に関わっていたなら。
震災での事故にどう対応したか。その前に、事故をどう防いだか。

大津市の教育委員会にいたら。いじめにどう向かい合ったか。
牛乳の食中毒を起こした雪印にいたら。

決して過ちを見過ごさなかっただろう。
たとえどれだけ人間関係を壊したとしても。

「いい人」であることと、困難な事業を成し遂げる人は違う。
上司と呼ばれる人こそ、この作品を読むべき。

この作品は、単なる「作り事」なのか。私は否定する。
村上春樹が言うように、フィクションは真実の尻尾を捕まえるためにある。


以前から書いているように、文学のテーマは何か。
それは「人とは何か」「生きるとはどういうことか」。

ならば、この作品は間違いなく文学している。
再読に値する作品だ。読んだ時によって、感想が大きく異なるに違いない。

サン・テグジュペリは1900年生まれ。彼自身、パイロットだった。
「星の王子さま」はリビア砂漠に墜落した経験から書かれた。

44歳の時、偵察飛行に出たまま行方不明となる。
03年、海底で機体が発見される。後の証言で、撃墜されたことがわかる。

こちらは堀口大学翻訳。
  

ふたつの訳がどう違うのか。比較するのも面白い。

追記

この作品を読んで思い出したのがスペースシャトル、チャレンジャーの事故。
レーガン大統領の演説はとても涙なしには語れない。

(ネット上初!!)レーガン大統領・チャレンジャー事故追悼演説(全文+和訳)

「チャレンジャー」の事故とレーガン大統領の演説 [ニュースと英語]

今、当たり前のように郵便が世界各国に届くのは。
誰かの犠牲があったからだ。

 読書のページ(書評)

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