ブラックな部分もあるが、興味深く読めたミステリー。ネタばれあり。
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この作者は初めて。
名前は女性のようだが男性作家だという。
地震を予告した一本の電話が大学生、毛利圭介の運命を変えた。
それは過去への旅への招待状だった。
作品でも紹介されているが、「リプレイ」(ケン・グリムウッド)と話は似ている。
漫画で言えば「遥かな町へ」(谷口ジロー)。
「ターン」(北村薫)や「夏への扉」(ハインライン)とも似ている。
「リプレイ」と大きく違うのは、毛利が希望してリピートに参加したこと。
また、「リピート」では基本的に一度しかリピートできない。期間も短い。
人を救うことで歴史が変わってしまうという点。
スタートレックの有名なエピソードを思い出した。
「危険な過去への旅」(「永遠の淵に立つ都市」)だ。
10人を乗せたヘリは上空で黒いカーテンのような時空の割れ目に入る。
そして10ヶ月前に戻る。
だがリピート直後に長距離トラック運転手の高橋が事故死する。
その後も横沢が焼死、坪井の不可解な自殺と事件が連続。
毛利は別れた元恋人の由子に復縁を迫られ、殺してしまう。
さらには白昼、郷原が刺殺される。
連続した事件は何を意味しているのか。
私は黒幕の風間にとってのメリットを考えた。
そうすると結末もある程度予測できた。
別の結末のほうが面白かったんじゃないかということも考えたくらい。
いくつか疑問もある。
事故死した高橋だが、10ヶ月前の勤務状況はリピート前に調べられなかったのだろうか。
運転中に失神してしまうのはあまりにリスクが高すぎる。
また、毛利は「リプレイ」を読んでいたのであれば、避妊を考えなかったのか。
再度のリピートを望むのであれば、「リプレイ」で学ぶべき。
登場人物に感情移入できなかったのは、毛利の身勝手さや迂闊さが大いに関係している。
風間の黒い内面には気持ち悪くなった。特に鮎美に対する揶揄は最悪。
その風間も自分が招待した大森に殺される。
不老不死で人をコントロールしようとして自滅。天罰か。
少なくとも天童や大森、坪井、高橋をリピートに呼んだ時点で失敗。
頭がいいようでバカだった。よく今まで死ななかったものだ。
それとも風間は作者の都合で描かれたのだから仕方ないのか。
リピートは必ず10人でなければならない理由などないのに。
その後も仲間割れは続く。
ヘリを操縦するため渡米して免許を取った天童まで死ぬ。
毛利だけがリピートに成功したのだが・・・・
せっかくのチャンスを無駄に使うところが人の愚かさを象徴しているのか。
残念なのは、リピートまでがとても長いこと。
作者には後半加速して、読者を引きつけようとした狙いがあったのだろう。
だが多くの書評で指摘されているように、その長さがマイナスポイントとなった。
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私が読んだのは文庫本。解説は大森望。
この作品と似た、タイムとラベルものを多く紹介していて参考になった。
作品でも出てくるが、この世界には歴史を元に戻そうとするレールがあるのだろうか。
それとも一度変わってしまった歴史は狂ったままになるのか。
さらに、平行世界(パラレルワールド)は存在するのか。
世界はひとつなのか、それともいろんな世界が同時に存在するのか。
このあたりは考えると時間がいくらあっても足りない。
乾くるみと言えば、「イニシエーション・ラブ」。
イニシエーション・ラブ 文春文庫 / 乾くるみ 【文庫】 |
順序が逆かもしれないが、読んでみたい。
読書のページ(書評)
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