2013年01月29日

「誰かと暮らすということ」伊藤たかみ

芥川賞作家の雪崩式連作短編集。
ページが進むにつれて、段々と引き込まれた。
   

正直、芥川賞受賞作「八月の路上に捨てる」は期待はずれだった。
だがこの作品は予想以上の出来。読んでよかった。

「セージと虫」

会社で同期のセージと虫壁。
忘年会で前に座ったことから言葉を交わす。

虫壁は、言えないことをメールに書く。
しかしそのメールは送信されることがない。

プリントアウトされたメールをセージの車で捨てに行く虫壁。
しかもその日は大晦日。

実は、こうした「送らないメール」というのは多く存在しているのかもしれない。
あり得ないと否定できないのが怖い。へその緒を捨てるのも怖い。

「子供ちゃん」

独立したデザイナー太一と波子の夫婦。
波子は流産していることから二人の間にはすきま風が吹く。

レンタルビデオ屋「グレープ」でアルバイトする波子。
実はこの店が全体を結びつける。

波子の喪失感がよく出ている作品だった。
この夫婦、最後に再登場する。

会話に出てくる「ど根性ガエル」は、西武池袋線が舞台。
(下井草は西武新宿線)

「やや」

今度はセージがメイン。
脳溢血で倒れた父親がエロ行為に走る。

父を嫌う妹は、援助しようとするセージに反発。
はしかにかかった虫を見舞うセージ。彼女のために買い物をする。

「サッチの風」

レンタルビデオ屋の店長、健一メインの話。
妻の幸子が家を出る。食器洗浄器がきっかけだった。

脇役だと思われた店長の過去を描く。
このことで話に幅ができた。

「イモムシ色」

虫壁に告白しようとするセージ。
狙いが狂って虫を怒らせる。

告白しようとする女性にイモムシ色とか言うなよ。
いい子は真似しないように。

「アンドレ」

名ばかりで部下のいない正樹は、デザインバッグの卸をしている。
脱サラしてカレーの店を開こうか考える毎日。

正樹の恩師、アンドレ(プロレスラーのほう)は偉大。
未来が見える預言者のようだ。

「サラバ下井草」

セージと虫壁再び登場。
熊本出張を前に、セージの携帯を壊してしまう虫壁。

セージが怒ったり浮気したりすることを恐れる虫壁。
時に性格悪い彼女だが、憎めない。

「誰かと暮らすということ」

子どもを作るかどうかがきっかけとなって離婚した鏡子。
大阪から母親がやってくる。

正樹の一家や波子夫婦に出会うのはご都合主義だがいいまとめ方。
希望を残して終わるのは、爽快感があっていい。

***** ***** ***** *****

読んでいて思い出したのは、「その日のまえに」(重松清)。
特に最後のエピソードでアパートの住人が入れ替わるところが似ている。

連作短編集のメリットは、キャラを再利用できるところ。
終わりに近くなると話が深くもなる。

こうした形式の本を、多くの作家は出したがるんだろう。
私は素直に楽しめた。

 読書のページ(書評)

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posted by りゅうちゃんミストラル at 07:31| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 今まで読んだ伊藤さんの本の中で一番好きです。4つ星半〜5つ星
Weblog: ポコアポコヤ
Tracked: 2013-02-18 11:05