2013年02月12日

「イワン・イリッチの死」トルストイ

苦しみ抜いて死んだ、判事の話。
テーマが重くてボディーブローのような作品。
   

恥ずかしながら、私は今までトルストイの作品を読んだことがなかった。
「典子の生きかた」(伊藤整)にこの作品が詳しく紹介されていたので、今回読んだ。

人は必ず死ぬ。
ロシアの文豪が描く人の死。

父親と同じく官吏の道を行くイワン。
知事の補佐官から検事、判事と昇進を続ける。

この物語は現代の日本にも通じる。
こんなセリフを耳にしたことはないだろうか。

「家族に迷惑をかけないよう死にたい。できれば苦しまずに」

ところが実際は家族を憎み、孤独と不信感いっぱいで死ぬ人もいる。
死を前に、人は聖人君子ではいられないもの。

それまで順風満帆だったイワンの人生。
結婚後、妻との関係がおかしくなる。

高い地位を手に入れたイワンだったが、新居の内装作業中に落ち、わき腹を強打。
軽症かと思われたが、患部が悪化する。

複数の医師が診察しても、どこが悪いのかすら分からない。
自分の死を悟ったイワンは、自分の死が家族の自由と幸福をもたらすと考える。
そして彼は最期の3日間を喚きながら死ぬ。

死を前に、彼が思い出すのは子どもの頃のこと。
食べ物やおもちゃなどが思い浮かぶ。

この部分で思い出したのは、映画「市民ケーン」。
新聞王が死ぬ前に残した言葉は「バラのつぼみ」だった。

日本で死を見つめた小説として思い出すのは、「その日のまえに」(重松清)。
だが、ガン死という現実を描きながら、重松の作品には希望が残されている。
その意味で、イワンとはまったく違う。

村上春樹は作品の中でこう述べている。

「死は 生の対極としてではなく、その一部として存在している」
(「ノルウェイの森」から引用)

前から何度も書いているが、文学の大きなテーマは「生きるとは何か」。
そして「人とは何か」ということ。
その意味で言うなら死を見つめたこの作品は、まさしく文学。

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やぎぃの日記(158)レフ・トルストイ著『イワン・イリッチの死』

イワン・イリイチの死 / トルストイ 著(望月哲男 訳)

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