山本周五郎賞受賞作、2011年本屋大賞2位。
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「ミクマリ」
主人公は高校生の斉藤卓巳。
コミケで声をかけられ、主婦「あんず」(里美)とズルズル不倫の関係に。
かなり激しい性表現による作品。
女による女のためのR―18文学賞の大賞なのもよくわかる。
女性が描く、男の性ということだが大きな違和感なく読めた。
最初のエピソードを読んだだけで、挫折した読者もいただろう。
私自身、実際かなり引いた。
だが読み続ければ、作者が何を意図していたか理解できるはず。
「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」
あんずメインのエピソード。
学生時代の話が読んでいて痛かった。
もっと痛いのが義母とあんずの夫。
監視カメラを室内に設置し映像をネットで公開したのもこの夫以外考えられない。
それをさらに広めた福田とあくつも痛い。
「2035年のオーガズム」
今度は卓巳に告白した七菜がメイン。優秀な兄が怪しげな集団に入る。
激しい雷雨で洪水となり、父親が単身赴任している松永家を襲う。
「セイタカアワダチソウの空」
これは卓巳の友人である福田の話。
父親が借金を苦にして自殺。母親は家を出る。
高校に通いながらも、新聞配達やコンビニのバイトで必死に生活費を稼ぐ。
バイト先で出会った田岡に勉強を教えてもらう福田。田岡には秘密があった。
ふがいない登場人物が多い中、いちばんしっかりしているのがこの福田。
問題ばかりの団地に祖母と住み、厳しい現実と直面している。
彼は無事に大学生になれたのか。
フィクションながらその後が気になる。
「花粉・受粉」
最後は助産師をしている卓巳の母。
ここまで読むと、生と性が深く関係していることがよく分かる。
何だか海堂尊が「ジーン・ワルツ」で描いた世界に。
***** ***** *****
短編連作集としては、「きみの友だち」(重松清)。
「よろこびの歌」(宮下奈都)を思い出す。
最初に書いたように、この作品は2011年本屋大賞2位。
「謎解きはディナーのあとで」が大賞だった。読みやすさを考えれば妥当?
いろいろと批判はあるかもしれない。
でも私はこの本を手にし、終わりまで読んでよかった。
人が生きていく上で、生と性の問題は欠かせない。
文学の大きなテーマが「人とは何か」ということなら。
この作品たちは、間違いなく文学。
***** ***** *****
老婆心ながら、性の乱れは悲劇につながる。
あんずが不妊となった原因のひとつは過去の性感染症。
ちょうど12月1日は世界エイズデー。
今日、この記事を書くのは偶然とは思えない。
エイズ患者がどんな死に方をするかは「逝年」(石田衣良)以上に悲惨なはず。
決して私は登場人物たちの生き方に賛同するわけではない。念のため。
この作品、映画化された。
あんずが田畑智子って美人過ぎない?
読書のページ(書評)
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