2012年11月29日

「ぼくのメジャースプーン」辻村深月

超能力を持った少年の話。とても興味深く読めた。
この記事ネタばれあり。
   

主人公は小学生の「ぼく」。
4年の時、学校で飼っていたウサギが大量に殺される。

犯人は、何不自由ない生活をしていた医学生。
しっかり者でウサギの飼育に熱心だったふみちゃんはショックで心を閉ざす。

器物破損で執行猶予3年の判決が出た。
納得せず、自分の力を使って復讐を考えるぼく。

彼の能力は、「条件ゲーム提示能力」といって条件で相手の行動を操作するもの。
少年と同じ能力を持つ秋山教授。彼の答は何なのか。
その答は、少年とはどう違うのか。読んでいて結末が気になった。

そして、罰とは何なのか。復讐の意味は?
読みながら、いろいろと考えさせられた。

秋山が言ったこの台詞。

「自分の命を他人のために投げ出す。そんなことができる人間なんていないんですよ」
(本文から引用)

本当だろうか。私は読んでいて疑いを持った。
実際、過去にはこんなことがあった。

「私を撃って」という少女の論理

「塩狩峠」(三浦綾子)や映画「アルマゲドン」でもそうだ。
自己犠牲で命を落とす人が描かれている。

辻村は「否定されるであろう文章」を用意したのではないか。
そう考えるのは私だけ?

蛇足ながら、こんな意見も紹介しておく。

「自己犠牲の死 称揚するな――「いのちの教育」がはらむ矛盾」

ところで自己犠牲を知ったふみちゃんは、それを喜ぶだろうか。
生き残った者の悲しみというものを、もっと描いてほしかった。

疑問をもうひとつ。
ウサギを殺した市川が、どうして人を殺さないと言えたのか。

犯罪はエスカレートする。
動物虐殺をした犯人が、次に人を狙うことは現実にあること。

たとえば、幼児を狙った通り魔事件が起きたとしよう。
警察は、現場付近で動物虐待事件があれば注目する。

それは、犯行のエスカレートが存在することを意味する。
秋山は、心理学が専門のはず。なぜこの点を指摘しないのか。

もし自分に、彼のような能力があったら、犯人を殺すかもしれない。
だが「人殺し」を長い間苦しむだろう。

ただ、他人を殺させるようなことはしない。
憎しみが負の連鎖になってしまうからだ。

もうひとつの「もし」は、別の作家がこのテーマで書いたら。
「クロスファイア」や「龍は眠る」の宮部みゆきなら。

「装填された銃」だと「クロスファイア」の主人公は言った。
人は能力があると、銃や核兵器のように使ってしまうものだ。

「超能力があればなあ」などと人はよく夢想する。
だがあればあったで悩みが増えるだけ。

光の帝国」を出した恩田陸なら。
「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」の筒井康隆なら、どう表現したか。

すでに述べたマイナス点はあるが、この作品はとても深い問題を指摘している。
刑法や社会学、ゲーム理論など、問題は複数の分野に及ぶ。

多くの人が支持するのがよく理解できる。
私自身大いに堪能し、感動した。

***** ***** *****

おまけ

火に飛び込むウサギのエピソードが話の中に出てくる。
これは、仏教で有名な話。「ブッダ」(手塚治虫)でも紹介されている。

特殊な能力がなくても、話術で人の行動を操作できる。
私も何度か試してみたことがあるけど、怖くなって使わなくなった。
レベルは違っても、秋山の言う「関わらない」のと同じ。

 読書のページ(書評)

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