浅田らしい話の展開。ネタばれあり。
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この作品、何故か読んでいなかった。
遅くなったが、私にとってはこのタイミングで読めたのは幸い。
話の始まりはクラス会だった。
主人公の真次は行くつもりがなかった。
何故か参加し、慣れない酒に酔い地下鉄のホームで恩師に出会う。
書道を担当していたその教師。
そして今日が兄、昭一の命日だと気づく。
兄は大学受験を前に、父とケンカし地下鉄に飛び込んでの自殺。
真次は母親とともに家を出る。
一代で財を成した父の後継者は末の弟。
その父は病床にあったが真次は見舞いにも行かない。
それだけ父子の確執は溝が深かった。
恩師とホームで別れた真次は、終戦直後の混乱した東京に迷い込む。
そこで帰還兵のアムールという男と出会う。
話としては「椿山課長の七日間」に通じるものがある。
さすがにこの展開、結末は読めなかった。
因果律という面では映画「バックトゥーザフューチャー」のよう。
「ターミネーター」にも通じる。
この作品を高く評価するかどうか。
その分かれ目は、過去を旅するという点を受け入れるか否か。
受け入れない読者は物語に違和感が残ったまま読み進めることになる。
私自身は素直に受け入れた。読者に受け入れさせるのもまた、浅田の上手さ。
この作品で考えるのは、ふたつの「もしも」。
もし、あなたが真次だったら、父と和解して会社役員になるだろうか。
みち子だったら、彼女の選択をあなたは支持するだろうか。
もうひとつの「もし」は、このテーマを別の作家が描いたら。
「蒲生邸事件」で過去に飛ばされる主人公を描いた宮部みゆき。
彼女なら、みち子を主人公として描く?
「トキオ」でも過去に飛ぶことで親子を表現した東野圭吾。
彼ならまた違った作品になっただろう。
「ターン」や「スキップ」を書いた北村薫も興味深い。
海外の作家ならどうだろう。
「リプレイ」で、何度も人生をやり直すことになった主人公を描いたケン・グリムウッド。
彼ならまったく違う作風になったかもしれない。
タイムとラベルではないが、主人公がコールドスリープで未来に希望を託す「夏への扉」。
名作として読み継がれているこの作品を出したハインライン。
彼はこうしたテーマを得意としているだけに、想像するだけでワクワクする。
こうしたことを空想するのは、読者としてとても楽しい。
時間がいくらあっても足りないくらい。
浅田次郎の作品は、「壬生義士伝」とか「蒼穹の昴」をまだ読んでいない。
今さらながら読むべきか。
読書のページ(書評)
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