2012年10月14日

「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午

04年「このミステリーがすごい」1位。
賛否両論なのがよくわかる作品。この記事ネタばれあり。
   

成瀬将虎が自殺するところを助けた女性、さくらと恋に落ちる。
そして悪徳商法を調べることに。

この作品、アマゾンの評価が割れている。
叙述トリックを受け入れられるかどうかが大きな分かれ目。

成瀬たちが70代であること。
美智子皇后とつばめグリルが出て来たところで私は気がついた。

「TIE」が「山下」なのはいかにも苦しい。
他にもご都合主義な部分がいくつかあった。

再挑戦(特に高齢者)に対するエールはよくわかった。
この作品を支持する人の気持ちも理解できる。

読んでいて、「向日葵の咲かない夏」(道尾秀介)と「火車」(宮部みゆき)を思い出した。
これらの作品を読んでいる人なら、私が言いたいことを理解できるはず。

「向日葵・・」は私の好みではなかった。逆に、「火車」には納得させられた。
借金のために売春させられた女性がどうなったか。

宮部は「火車」で怖いくらいに表現した。
70になっても体を売り続ける女性なんて、私には想像できない。

ましてやその女性を好きになることなど私にはまったく理解できない。
コーヒーただ飲み(これは詐欺!)する男ならばこその選択だ。

もうひとつ、「火車」では他人になり済ますということが行われた。
これも本書で使われている。成瀬が「一人二役」であることは予想できた。
だがさくらまでがそうであるとは思わなかった。

こうしたミステリー小説というのは、「騙された喜び」が必要。
だが、私はちっとも爽快さを感じなかった。
現実を見せない作品にカタルシスを感じる読者にはなりたくない。

さらにもうひとつ、この作品が好きになれないのは登場人物に感情移入できないから。
千絵に送金するためとはいえ、年金の不正受給はいいのか。

裏表紙には再読について書かれていたが、私は一度読めばもうたくさん。
再読する時間あれば、別の本を読みたい。

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posted by りゅうちゃんミストラル at 07:58| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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