合唱で指揮者になったことから何かが変わる。感動の連作短編集。
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「よろこびの歌」
玲の母は著名なバイオリニスト。当然のように自分も音楽の道を志す。
声楽で音楽科を受験するものの不合格。
進学したのは新設の女子高で音楽科はない。
目立たないように過ごす。
2年のクラスで出た合唱大会。そこで指揮者に推薦された玲。
やる気のないクラスを厳しく指導するが、本番では惨敗。
しかしその後行われたマラソン大会で、玲を応援する歌声がおきる。
彼女たちに無音のスイッチが入った。
「カレーうどん」
今度はピアノを担当した千夏の視線。家がうどん屋の千夏。
実は玲の母親のファンだった。
「No.1」
早希は中学のソフトボールでエースの4番と活躍。
しかし最後の試合で肩を壊し、強豪校への推薦入学も夢に終わる。
挫折感いっぱいで高校進学した彼女は・・・
「サンダーロード」
人には見えないものが見えてしまう史香。
そのため、歴史の浅い新設校を希望した彼女。
玲を見つめるおじいさんのメッセージを伝える。
「バームクーヘン」
このエピソードは佳子がメイン。
バレンタインにボーイフレンドの南君の家に行く。
そこで核シェルターを見せられた彼女は・・・
「夏なんだな」
委員長でしっかり者のひかりは、姉に対して憧れを抱いていた。
ひかりも第一志望の高校を落ちる。
姉の選択は看護の道だった。
「再挑戦」というのは、すべてのエビソードに通じるテーマ。
「千年メダル」
合唱大会のリベンジをすべく、「麗しのマドンナ」を練習するクラス。
上達するものの、「何のための音楽か」ということを考え始める。
ハイロウズの音楽はこんな感じ。
いや、読んでいて何度も泣いた。すばらしい短編集だ。
少女たちの挫折感、微かだが確実な希望がとてもよく伝わってくる。
「少しくらいの遠回りはたいした問題じゃない」というのは大人の論理。
経験が乏しい高校生にそんな理屈が通用するわけない。
読んだ後感じたこと。
それは主役が玲ではなく千夏ではないかということ。
みんなを刺激したのは確かに玲。
しかし、最初に石を池に投げ込んだのは千夏。
千夏が投げた石が、池に波紋を起こした。
彼女こそ隠れた司令塔(黒幕?)だった。
とにかく人に推薦したくなる
すばらしい物語をありがとう!
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書籍「よろこびの歌」読了。宮下奈都作品、今のところハズレ無し。
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この作品、私も好きです。
千夏が隠れた主役というのは、たしかにそうかも知れませんね。
千夏が玲に指揮をやるように頼まなければ、その後の展開もなかったですし。
そして続編の「終わらない歌」でもう一度彼女達の物語が読めたのも嬉しかったです。
玲と千夏の友情が続いていたのも何よりでした♪
コメントありがとうございます。
宮下の作品は、静かで地味ですが確実な感動があります。
そこが魅力だと私は考えます。
上の書評にも書きましたが、高校生にとって「拒否される」ことは大きな挫折です。
受験で不合格となること。
ソフトボールで故障しプレーできなくなることは単なる「遠回り」以上のダメージがあります。
続編の「終わらない歌」ですが、未読です。
近いうちに読む予定です(汗)。