女性作家の視点で描く、嫉妬と誤解が恐ろしい。
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最初は仲間ができたと喜ぶ母親たち。
子どもと一緒に記念写真を撮るところなど、とても微笑ましい。
だが、平和な関係は長くは続かなかった。
取材を受ける際の言動で、早くも亀裂が生じる。
「人は人、自分は自分」と思っていても、人は弱い。
他人の生活がとても気になる。自分いないものを欲しくなるのは当然だ。
加えて、都会にいても人は孤独。逆に都会だからこそ、孤独なのかもしれない。
後半5人の母親たちが、人間関係に亀裂を生じるだけでない。
それぞれが壊れていくのがとても怖い。
この作品、別の視点があったらどうだったろうか。
例えば5人の近所に、子どもの欲しい若い夫婦がいた。
だがこの夫婦は医学的な事情から子どもができなかった。
妻は、5人の母親を見て羨ましいと感じる。
この夫婦(主に妻だけが登場)は各章の終わりに少しだけ出てくる。
角田の表現力なら、そのくらいは可能だ。
そして、「ママ友っていいなあ」とか感じる。
後半には、脱臼した娘を抱えて瞳が病院へ急ぐのを見る。
また、マダムの娘が学校に行けない様子に出会う。
こうした登場人物がいたら、物語にアクセントができたのに。とても惜しい。
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「八日目の蝉」の記事を書いた際。
「森に眠る魚」も実際起きた事件がモデルになっているとのコメントをもらった。
それがこの事件。
文京区幼女殺人事件(wikipedia)
この作品を読み始めてすぐ、「ああ、この事件か」とわかった。
予断を持っての読書は面白みに欠ける。
こうしたコメントは、今後遠慮していただきたい。
周回遅れの読者もいるのだから。その前に私も気をつけたいと思う。
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以下、反論覚悟で書く。
私は結婚もしていないし、子どももいない。
こうした小説を読むと、結婚してなくてよかったと心から思う。
世界中に人間は70億を超えるほどいる。
ならば、私が子どもを持たなくても構わないんじゃないか。
こんなドロドロした人間関係を見せられたら。
「少子化バンザイ」と叫びたくなる。
住んでいる環境によって、「高校まで公立でいい」というわけにはいかなくなるのか。
私には理解しにくい話だ。
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角田の作品を次に読むとしたら、短編集になるだろう。
最近、凹む作品が多いので、楽しい作品を探そう。
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