2012年09月16日

「灰色の虹」貫井徳郎

冤罪で服役した男の復讐を描く。救いのなさに凹んだ。
(この記事、ネタばれあり)
   
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上司が殺され、疑いをかけられた江木雅文。
アリバイを証明する人がおらず、殺人で有罪となる。

姉は婚約を破棄され、家を出る。父親は重い鬱で自殺する。
江木は、事件関係者に復讐を始める。

最初に狙われたのは、自白重視で問題がある刑事。
そして検事や裁判官が次々と死ぬ。

復讐劇ということで「さまよう刃」(東野圭吾)を思い出した。
凹む小説ということであれば、「疾走」(重松清)以来の落ち込み。

問題点は裁判官石嶺の行動。
妻の浮気相手(郵便配達員)を陥れるため、仮病で公判を休む。

そして、何をするかと思えば郵便物を奪って隠す。
解雇させられれば、妻との関係が終わると読んでのことだ。

堅物の裁判官が、そんなことするだろうか。もし発覚すれば、罷免されてしまうぞ。
支部長までしているベテラン裁判官がそんな幼稚な行動を選択する?

しかも、警察から身の危険を警告されているのに。
狙われているということは、見られているということでもある。

私には、短絡的な石嶺の行動が理解できない。
まるで、小説成立のため復讐をアシストしたがっているかのようだ。

検察官の谷沢にも大きな疑問がある。
彼は、無実なら自白するわけがないという考え。

だが、過去の冤罪事件を見てもその考えがいかに危ういかがよくわかる。
谷沢は人に点数をつけるのがとても得意。

ならば、冤罪を見抜けなかった検事は、何点なのだろう。
マイナス2万点が妥当だと私は考える。冤罪はまさにプライスレスだ。

作者は、法曹界を悪意で描くことに喜びを感じているのか。
500ページを超える大作なのに、とても惜しい。

雅史は、どうすれば無罪になったのだろう。
怖い刑事相手に、否認を続けられる人がどれだけいるのか。

上司が婚約者を侮辱するのを黙って見ている?
それで後になってから「弱気だったかも」と逆に思わない?

また、復讐以外にどんな手段があったというのか。
再審がどれだけ狭き門か、どれだけの人が知っているのか。

「復讐は許されない」というのはもちろん正論。
そうでなければ、この世は復讐だらけになってしまう。
しかし、多くのものを失った人間に、その正論はどこまで通じるのか。

とても少ないが、救いは山名が目撃者に謝罪を迫ったこと。
だとしても異臭を感じた時点で山名は気がつくべきだった。

この世には、神も仏もいないのか?

あまりに悲しすぎる


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